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しおりを挟むナディーヌは、姉が格上の養子になったことを知ってからイライラするようになった。
バルテレミーと気晴らしにパーティーに出ても、挨拶される程度で取り囲んでドレスや装飾品を絶賛されることもなくなっていた。
それは学園でも同じようなことになっていて、話しかけても差しさわりのないことしか言われなくなったのだ。すぐに話が終わったとばかりに人が離れていって、ナディーヌはストレスがたまる一方となっていた。
その上、バルテレミーの成績が急降下したのだ。
「ちょっと! あの試験の順位は何なの!?」
「っ、成績のことで、君にとやかく言われたくない。君より酷くはないんだからな」
「私はいいのよ! 愛嬌さえあれば、どうにでもなるって、両親も言ってくれているもの」
「なら、せめて、マナーくらい最低限なものを身に着けてくれ」
バルテレミーにそんなことを言われて、ナディーヌは激怒した。
そんなことを言われたことに腹を立てて、ナディーヌはすぐさま両親にその話をした。
「確かに酷い成績だな」
「そうでしょ?」
ナディーヌは、そんな子息より、もっといい子息を探してやると言うと思っていた。でも、違っていたのだ。
「だが、この家に婿入りしてくれるんだ。そのくらい目をつぶるしかない」
「な、何でよ!?」
両親は、いつもどんなわがままでも聞いてくれていたのにナディーヌに我慢させるようになったのだ。
「この家の跡継ぎになったんだぞ? その自覚はあると思っていたが」
「だから、あんなのよりもっといい婿養子を探すべきよ」
「……お前の成績の悪さと教養のなさを知っていて、婿入りしたがる者が他にもいると?」
「それは、関係ないでしょ! 愛嬌があれば、大丈夫だって言ったじゃない!」
「それは、留年する前までだ。こんなになるほどの成績の悪さだとは思わなかった」
どうやら、ナディーヌはリュシエンヌがいなくなってから、勉強をするよりも他のことをしてストレス発散していたこともあり、成績が以前にもまして酷くなっていたようだ。
留年が決定したと家に知らせがあったらしく、そのせいで両親はこれまでの通りにナディーヌのわがままを聞いてられないとようやく現実を見ることにしたようだ。
そんなことをせずとも、ナディーヌを跡継ぎにしたことで他の家の面々が伯爵家から離れて行ったのだ。
それに加速するようにリュシエンヌが隣国の公爵家の養子となって、更に付き合いをするだけ無駄なことだと周りに思われてしまったようで、伯爵家はとんでもない苦行の中にいるのだが、そのことにナディーヌは気づいていないし、理解できていなかった。
それでも、留年くらいお金で解決ができるとナディーヌは思っていたが、そんなことはない現実を思い知るのも、すぐだった。
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