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しおりを挟むアリーは、凹んでいた。
「やっと会えたんでしょ?」
「お前か」
声をかけられたアリーは、幼なじみのエリーセだとわかると会いたい人ではないと言わんばかりの顔をしていた。
「すっごく綺麗な人よね」
「あぁ、昔より遥かに美しくなったな」
二人は、リュシエンヌのことを話していた。アリーが小さい頃に出会ったのは、リュシエンヌだったのだ。
つまりは、リュシエンヌが女の子だと思っている可愛らしい容姿の男の子だったわけだ。そう、男だったのだ。
まさか、想い人に男の子ではなくて、女の子だと思われているとは知らないアリーは、リュシエンヌにあの花の図鑑を見せてから妙な距離感を持たれるとは思っていなかった。
意識してくれているのだとわかればまだ救われるのだが、どうにもそうは思えないのだ。
それどころか。図書館にも現れなくなったのだ。それもこれも、幼なじみのエリーセがリュシエンヌと一緒にいるようになったせいだ。
だが、エリーセには強く言えないところもあった。彼女の現状を知って、エリーセの婚約者の家がリュシエンヌの遠縁だとわかって、彼女を養子にできないかと画策してもらうのに助けてもらったのだ。
それがあるためアリーは、幼なじみに強く言えずにいた。彼女に幼い頃から美少女だったことやらをアリーがしていなかったのだ。
美しく成長しているだろうとは思っていたが、エリーセが好む美しく成長しているリュシエンヌを見て、独り占めを始めるとは思うまい。
「ややこしいことしてないで、さっさと婚約したら?」
「そうはいかない。彼女は、育ての両親たちやあの国で散々な目にあっていたんだ。やっと笑うようになったのにまた心を閉ざしてしまったら、困る」
「まぁ、私は王子と婚約しても申し分ない家柄になるまでは助けたんだから、あとは自分で何とかしてよね」
「……」
「何よ?」
「いや、何でもない」
アリーは、何気に幼なじみとして売り込みをしてくれればいいのにと思ったが、そんなことをしてリュシエンヌの心を掴むなんてプライドが許さなかった。
「それより、幼い頃に急に会わなくなったままなんでしょ? あの花が唯一、国境を越えてネーデルでも見れたことについても、お礼をきちんと言うべきじゃないの? 私も、一緒に見させてもらったんだもの。さっさと話してくれなきゃ、私もお礼言えないんだけど」
「それは、他言無用だと言っただろ。そんなことができると知られたら、彼女の身が危うくなる」
そうなのだ。アリーが、母に見せたいと願って作ってくれたブーケは、母やエリーセも見ることができたのだ。
見た途端に枯れてしまったが、彼女の言っていた通りになったのだが、その後、母親の体調が悪くなり、ジスカールに行くことが二度とできなくなったのだ。
そんなことがあって、会えなかっただけで、リュシエンヌが悔やんで反省しているようなことにはなっていなかったのだが、アリーはリュシエンヌが誤解していることも、お互いにすれ違いが発生して取り返しのつかないことになっていることにも気づいてはいなかった。
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