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しおりを挟むリュシエンヌは、エリーセと会うのが楽しくて仕方がなかった。彼女の髪と瞳が、懐かしい思い出を呼び起こして、彼女の輝く瞳を見て、あの花を思い起こすのだ。
彼女を見て話しているとあの花を身近に感じられるようになり、リュシエンヌは図鑑をアリーに返すことにした。
「長らくお借りしてしまって申し訳ありません。お返しします」
「あ、いや、もう、いいのか?」
「はい。もう、十分です」
「……そ、そうか」
彼も、エリーセと同じ髪と瞳をしていたが、リュシエンヌには同じようには見えてはいなかった。エリーセは、眩い煌めきを持っているように見えるが、アリーは同じ煌めきを感じないのだ。
「リュシエンヌ嬢。その……」
「すみません。これから、人と約束がありますので失礼します」
「約束……?」
「はい。エリーセ様とお茶をご一緒するんです」
アリーは、その名前を聞いてホッとしながら、ぽつりと帰って来ているのかと呟いたが、リュシエンヌには聞こえてはいなかった。
リュシエンヌは笑顔のまま、図書館をあとにしてエリーセとの約束の場所へと向かった。
「また、エリーセと話していたの?」
「はい。花のことを話していました」
コルネリアは、リュシエンヌがエリーセとばかりいることに何とも言えない顔をよくしていた。
エーヴァウトは、意気投合すると思っていたが、流石にここまでとは思わなかったと遠い目をしていた。
その頃には、エリーセがアリーとは幼なじみなことをリュシエンヌが知ることになったが、血の繋がりがないことに驚いてしまった。
そんな、ある日。エリーセと同じく留学していた子息が戻って来た。エリーセは、途中であの花を咲いているのを見かけることが殆どないと聞いて、それでもそれなりに探していたが、見つけられそうもないと早々に戻って来たのだが、その子息は留学期間ぎりぎりまで探し回っていたようだ。
「子息で、エリーセに次いで、その花を好きなのは、彼くらいよ」
「そんな方がいるんですね」
リュシエンヌは、コルネリアの言葉にどんな方だろうと思っていた。
「その花を一目どうしても見たいって、色んなところに行っていたみたいよ。あっちの国の人って、親切に案内してくれるけど、それが大概嘘なのよ。私は、そんな嘘ばっかり頭に来ちゃって帰って来ちゃったのよね」
リュシエンヌは、チップの良し悪しで、案内のルートも親身になるのも変わりそうだと内心で何とも言えない顔をしていた。
エーヴァウトは、ふと、思い出したかのように言った。
「人を探しているとも言っていたな。その花の側に必ずいるはずだからとよく周りに言っていたが、そもそも見かけなくなっているのにどこの誰ともわからない人をどうやって探す気だったのか」
リュシエンヌは、その言葉に反応してしまった。自分も、あの花の側にいれば、見つけてもらえると思っていたのだ。
それが、誰なのかがわからなかったが、エーヴァウトの言葉にドキリとしたのは確かだった。
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