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しおりを挟む「この花が、滅多に見れない花となっているなんて信じられないわ。昔は、私が行く先々で咲いていたのに」
リュシエンヌが知らない間に咲かなくなったことを知って、悲しくなってしまっていた。それこそ、世界で一番美しい花と言われていたのと同時にジスカールでは、雑草の中の雑草なんて呼ばれていたことも、リュシエンヌは知らなかったのだ。
通りで、根っこごと刈り取って、国外に持ち出そうと躍起になったりする者が現れるわけだ。
そんな風に躍起になっていた者の気持ちを逆なでるようなことを言って、危うい目に合うのも仕方がなかったのだとリュシエンヌはようやく合点がいくことになったのだ。
一つ思い出すと芋づる式にその当時のことが思い出されていった。リュシエンヌは、そんな子供の頃のことを思い出して、ため息つきたくなってしまっていた。
「何も知らなかったのよね。通りで、この花が咲いているとあの人たちが、使用人たちに散々なことを言っていたわけよね」
ジスカールでは、美しい花という認識を持つ者が異常のようになっていたのだ。リュシエンヌは、あまり他の人とじっくり話すことがなかったため、あの国でその花を巡って、金儲けが横行していたことを知らなかったのだ。
そこかしこで、結婚式を祝う鐘が鳴り響いていたが、それも一時的だった。そもそも、あれが結婚を祝う鐘だとは、リュシエンヌは今更になって気づいていた。
そんなことを思って眠るようになったリュシエンヌは夢の中で、あの子を思い出していた。
金色の髪にとても綺麗な青い目をした同い年の女の子。美しい花と同じ色をした青と陽の光を浴びて輝く眩さを持つ金糸の髪。
とても可愛らしい女の子だった。だから、護衛もついていたのだろう。
それを思い出して、リュシエンヌは自分が好きな色を思い出した。
「そうだわ。私は、青が好きだったんだわ」
図鑑に載る花のようなあの子のような瞳をした青が一番好きなのを思い出して、それまでに見たことがないほど、リュシエンヌは満面の笑みを浮かべていた。
お互いが相手の瞳の色が好きだと言った。初めてできた同性の女の子の友達。
それなのにリュシエンヌは、知らずに嘘をついたと思われて嫌われてしまったことを嘆いていた。
「あの子に会えたら、きちんと謝罪したいものだわ。許してもらえるかはわからないけれど」
リュシエンヌは、そんなことを思っていた。
そう、リュシエンヌはあの頃に出会っていたのを女の子だとも思っていた。それこそ、とても可愛らしかったからだ。
それが、とんでもない勘違いの始まりだとはリュシエンヌは気づいていなかった。ただ、本当にあの頃も、今思い出した子は、女の子なことに間違いないと思っていることにまだ誰も気づいてはいなかった。
そして、それがこのあとで悲劇を生むことになるとは思っていなかったし、リュシエンヌはそれで悲しませることになるとは思ってもいなかった。
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