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しおりを挟むリュシエンヌが、アリーに幻滅することになったあとでのことだ。
図書館が、いつもではありえないほど騒がしくなったのは、すぐのことだった。
「殿下がいらっしゃると聞いたのに」
「やっぱり、ただの噂じゃないの?」
女生徒たちが図書館で、きょろきょろとせわしなく人を探していた。
本を読んでいたり、勉強している生徒たちは、滅多なことで来ないような女生徒たちのそんな騒がしさに眉を顰めて睨んでいる者すらいたが、彼女たちはそれに気づいていないようだ。
その中の一人とリュシエンヌは目があった。
「あっ、リュシエンヌ様! ねぇ、この辺りに……」
リュシエンヌを見つけて、いつものように声をかけて来た令嬢がいた。その声は静まり返っている図書館にこれでもかと響き渡っていて、リュシエンヌはぎょっとしてしまった。
ゴホンと咳払いが響いた。
「ここは、図書館ですよ。お喋りがしたいなら、他所でなさってください。利用者の迷惑です」
「そんな、少しくらいいいじゃない」
「そうよ。利用者なんて、大していないじゃない。それより、大事なことがあるのよ」
「……」
司書にそんなことを言う生徒がいることにリュシエンヌは別の意味で驚いてしまった。
そんな生徒たちに司書が怒り、利用者の生徒も聞き捨てならないとして迷惑極まりない生徒たちを追い出すまで、大した時間はかからなかった。
それこそ、リュシエンヌに話があるからと連れて出ようとするのを見て怒ってくれたのは、司書だけでなくて、他の利用者だった。そのため、一緒になってリュシエンヌまでも追い出されることはなかった。
「彼女を連れて行くことはないだろ。彼女は、元々ここにいたんだ。彼女の用事が終わるまで待つか。彼女にきちんと許可を取ってから連れ出すべきではないのか?」
「は? あなたには関係ないでしょ」
リュシエンヌを問答無用で連れ出して話をしようとする彼女たちに他の利用者たちが、噛み付いたのだ。
リュシエンヌとしては、学習室に借り物がそのままな状態で離れるわけにはいかないため、連れ出されるわけにはいかなかったのだ。
だが、リュシエンヌにどうしたいかと聞くことなく、どちらも言いたいことを言い合うことにリュシエンヌは、板挟みになり、それに肩を竦めてしまった。
彼女たちは、図書館から追い出されたことに不満があったようで、図書館の外で罵詈雑言を浴びせかけていたところを先生に見つかり、司書が何があったかを先生に話したことで、彼女たちは説教されることになったのも、すぐだった。
更には、図書館を出禁となることとなり、リュシエンヌは自分が一緒に追い出されていたら、同じように扱われていたかと思うとそうならなくてよかったと心からホッとしてしまった。
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