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リュシエンヌは、相変わらず図書館でアリーと色んなことを話していた。その話題の中に義兄の婚約者が花を見たくて留学したというのを聞いてから、リュシエンヌはどんな花なのかと興味を持ったことで、彼は図書館の本ではなくて私物の本を持って来てくれて見せてくれることになったのだ。


「ジスカールでしか見ることのできない花は、これだ」
「……」


そこに載っていた花を見て、リュシエンヌは驚いてしまった。


「っ、!?」


そこには、リュシエンヌが幼い頃によく見かけていた花が載っていた。それを見て、リュシエンヌの中で色んな記憶が蘇ってきた。

それこそ、そんな貴重なものだとリュシエンヌの周りの人たちが騒いでいたことを見たことはないが、そういえば刈り取って持ち出そうとしていた大人がいたような……。

あれは、自分の夢幻だったのではなかったのかとリュシエンヌの中で疑問だらけとなっていた。


「昔は、かなり咲いていたようだが、今ではジスカールでも滅多に見かけなくなったようだ」
「そうなのですか?」
「……リュシエンヌは、花が好きなのでは?」
「えっと、確かに昔は……。子供の頃は、よく花を摘んだりしてはいましたが、それも殆どしなくなっていたので……。そうですね。昔は、好きでした。今は……」


じっと、図鑑を見下ろす。リュシエンヌは、懐かしい気分にほっこりするのと同時に何も言わずにいなくなったあの子のことがよぎって、切ない気分になってしまっていた。


「今は……、好きではないのか?」
「……好きな方だとは思います」
「随分と曖昧な言い方だな」
「そうですね。自分の気持ちなのに変ですよね」
「……」


リュシエンヌは、アリーの言葉に苦笑しながらも、その花をじっと見つめたままだった。

そんなリュシエンヌをアリーは、何とも言えない顔をして見ていることにリュシエンヌは気づいていなかった。

その花を見つめながら、突然会えなくなった同い年くらいの子のことを思い返していた。

学園で探しても、見つけられなかった。だから、夢幻を見たのだと思っていたが、他所から来ていたのかも知れない。

それを母に見せたいからと呟いたその子にリュシエンヌが渡した花のブーケがあった。あの国でしか咲かない花を外に持ち出せなかったのかも知れない。

そんなこと知らなかったリュシエンヌは、おかしなことをその子に言ってしまって、ものを知らないと思われたのだろう。そのせいで、会いに来てくれなくなったのだとリュシエンヌは思ってしまい、自分の無知に悲しくなってしまった。

もしかするとしてはいけないことを願ったりしたから、咲かなくなってしまったのかも知れない。全てはリュシエンヌが余計なことをしたからだと思って、その花の図鑑を悲痛な顔をして見つめていた。


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