両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

珠宮さくら

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「随分と疲れているみたいだけど、大丈夫かい?」
「っ!?」


どうやって会話しようかとリュシエンヌが思っていたら、彼の方から声をかけられることになったのも、リュシエンヌが悩み始めて間もない頃だった。

リュシエンヌはそれに驚いて肩をビクつかせてしまった。


「っ、すまない。驚かせてしまったな」
「い、いえ、その、大丈夫です。少し、ぼーっとしていただけですから」


話しかけてもらえたことと彼に気遣ってもらえたことにリュシエンヌは、嬉しく思って微笑んでいた。それは、ここ最近の間に変化してきたことで、まだまだリュシエンヌには珍しいことだった

それでも、美人なリュシエンヌが微笑むだけでも、中々のインパクトはあったようだ。

そんな微笑みをリュシエンヌから間近で向けられた彼も、その影響を少なからず受けたようだ。


「っ、そうか。随分と疲れているように見えるが、勉強でわからないところでもあるのか? その、いつも、ここで勉強しているようだから、わからないところがあれば、その、私でよければ教えようか?」
「っ、」


その言葉にリュシエンヌは、願ってもないと思ってしまった。その反面、授業でわからないところが、リュシエンヌにはどこにもなかったことだ。それこそ、養子となった新しい家族たちの迷惑にならないように勉強を頑張ることくらいしか、リュシエンヌには思いつくことがなかったのだ。

そのため、教えてくれると言われて、すぐさま教わることはないと思ってしまい、どうしたものかと素直に悩んでしまっていた。

そんなことを素直に言わなければバレることはないのだが、リュシエンヌはそのことで嘘をつくなんてことをしたくなかった。そんなことをしても、すぐにバレてしまうと思ったのだ。

何より、いいなと思う人に好意を利用して嘘を付きたくはなかったことも大きかった。

そんな風に思ってしまったリュシエンヌは、戸惑ってしまった。そんな戸惑いを彼は、迷惑だと思われたと思ったようだ。


「あ、いや、いきなり過ぎたな」
「いえ、その、ありがとうございます。そう言っていただけるとそのお気持ちだけで、とても嬉しいです」


本当に嬉しいと思えてリュシエンヌは、またも嬉しそうに微笑んでいた。その微笑みを見て、青年は目を見開いて驚いた。そして、どこか懐かしそうにしていたが、リュシエンヌはそれに気づいていなかった。


「やっと笑ってるのを見れた」
「え?」
「あ、いや、何でもない。そうだ。名乗っていなかったな。その、私は、アリーだ」
「アリー様……?」


その名前にリュシエンヌは、何やら聞き覚えがあるような気がしたが、どこで耳にしたかを思い出せなかった。

ただ、懐かしい響きだと思えたのは、久しぶりのことだった。そう思えたことが、リュシエンヌは少し嬉しくもあった。


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