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しおりを挟むエーヴァウトも、友達の子息たちにリュシエンヌのことをそれとなく話していて、美人すぎる彼女の婚約者になれないかと一喜一憂していた。
「っ、」
「聞いていたより……」
「美人すぎるだろ!?」
それにエーヴァウトの友達の子息たちは、叫ぶ一人の子息の言葉に頷いていた。
「?」
「「「っ!?」」」
不意にリュシエンヌが、声が聞こえたのか彼らの方を見たことで、子息たちは肩を震わせた。
彼らは、リュシエンヌと目を合わせることもできないほど緊張して大変だった。あまりにも美人なせいで隣に立つ自信がないと婚約の打診なんてできないと逃げ腰になるのも早かった。
それは、エーヴァウトにもよくわかっていた。リュシエンヌと運良く婚約できたとしても、一生を添い遂げるとなれば、それなりの釣り合いがとれなくては隣に並び立つなんて難しいと思えてならなかった。
「まぁ、そうなるよな。そう考えると元婚約者は、例外中の例外ってとこだろうが、見る目のないのと婚約したせいで、あんな風になったと思うと殺意すらわくな」
エーヴァウトの言葉に友達の子息たちは、殺意立つのも早かった。そこは、同じことを思ったようだ。
それでも、リュシエンヌが悲しむようなことはしないと誓い合うのを忘れなかった。
それだけ、リュシエンヌという令嬢は美しすぎるのだ。そんな彼女が、心から笑ってくれたら、天にものぼる気持ちになって、浮かれ騒ぐ者たちは多く現れそうだ。
それをひけらかすこともなく、真逆に捉えてしまっているリュシエンヌに義理の兄姉だけでなく、養父母や周りも、どうしたものかと思って頭を悩ますことになったが、美人すぎるリュシエンヌが沈みきった表情をし続けるのを見て、それすら一枚の絵画として目の保養になると思われてもいた。
だが、見ている者たちの気分までも暗くなっていくことになり、ジスカールで憂い帯びたリュシエンヌを見て何とも思わない連中ばかりだったことに驚くばかりだった。
それこそ、見慣れすぎてしまっていたせいもあるのだろう。
「美人は、3日で飽きるって言うけど、見慣れすぎて何とも思わない隣国の面々の図太さには呆れるな」
「本当ね。リュシエンヌが、落ち込んだままでいると私まで悲しくなってしまって駄目だわ。どうしたら、笑顔を見ることができるのかしら」
そんなエーヴァウトとコルネリアに自分たちも手を貸すと言い出したのは、大勢いた。それこそ、生徒のみならず、先生たちすら、リュシエンヌを喜ばそうとし始めたのだ。
リュシエンヌは、そんなことになっていることに全く気づいていなかった。
ただ、やたらと話しかけられたり、好きなことや物について聞き出そうとされて、それに答えられない自分に逆にへこんでくという悪循環となっていた。
そのせいで、更に誰ともできる限り関わりを持たないようにしようとリュシエンヌが一人を好むようになるまで、そんなに時間はかからなかった。
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