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しおりを挟むリュシエンヌは、バルテレミーよりも成績や評価が上にならないように常に気を使っていた。
だから、バルテレミーの方が勉強ができると思っているのだろう。そんな風に思っている両親とナディーヌにリュシエンヌは何とも言えない顔をしていたが、それを言葉にすることはなかった。
まぁ、バルテレミーは要領だけはいい方だ。そのせいでヤマ山をリュシエンヌに教えてもらっているなんて誰にも言っていないようで、みんなも誤解しているのだろう。
そんな程度のバルテレミーを婿入りさせるためにリュシエンヌをさっさと用済みかのように追い出そうとする家族にリュシエンヌはため息も出なかった。
その程度でしかなかったのだ。まぁ、扱われ方からして、期待なんてしたことも、いつだったか覚えてはいないが。
「そう。まぁ、リュシエンヌちゃんがお嫁に来ると何かと気を使いそうだもの。妹さんの方が、気を張らなくてもよさそうなのは確かね」
「姉妹といっても全然似ていないから、妙な緊張もしなさそうだしな」
バルテレミーの両親も、婿入り先に変更がないだけで、息子が気に入っている方の令嬢と婚約したことに喜んでいるようだ。
その喜び方は、実は美人すぎるリュシエンヌと並ぶとなるとそれなりに頑張っても大変なことを彼の母親は気にしていたようだ。
父親の方も、美人すぎる嫁ができるよりは、ナディーヌ程度なら変な緊張もしないなと思ってのことだったようだが、そんなことを思われていることに気づく者はいなかった。
彼の弟妹たちも、彼の両親のようにリュシエンヌよりも、ナディーヌになって喜んでいるのだと思うとリュシエンヌはいたたまれない気持ちになっていた。リュシエンヌにとって、とても素直でナディーヌとは真逆なまでにいい子たちだったのだ。
だが、中身がバルテレミーと変わらなかったとしたら、見る目がなかったとしか言いようがない。それは、あの子たちではなくて、リュシエンヌの見る目がなかったのだと彼女は落ち込むだけだった。そんなことにもリュシエンヌは気づいていなかったのだと思うと自分のすべてが人と異なっていて、おかしくさえ思えてならなかった。
もう、どこにもリュシエンヌの居場所なんてないことを痛感することになり、暫く振りにリュシエンヌは部屋で一人になって涙を流した。
この国にいたところで、婚約者が見つかるとは思えないリュシエンヌは、留学することにした。
だが、その話をぎりぎりまで元婚約者にもナディーヌにもしなかった。
リュシエンヌの両親は、それこそ婚約者を見つけられるものなら、見つけてみろと言わんばかりにしていて、それこそ帰って来なくても何の問題もないみたいにリュシエンヌを送り出す気でいた。
その態度にリュシエンヌが密かに思ったことといえば、二度とこの家には帰りたくないという強い思いだけだった。
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