両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

４０

バルテレミーの友人の子息たちは、バルテレミーがいないところで、リュシエンヌとナディーヌを見て眉を顰めていた。


「正気とは思えないな」
「全くだな」


ナディーヌのドレスの酷さにげんなりしていたが、そこにバルテレミーがやって来て、こんなことを言ったのだ。


「リュシエンヌのやつ、妹に意地悪いことをまだしているのか」


どうやら、ナディーヌにあんな格好をさせて連れて来ているとバルテレミーは思っているようだ。

どう見ても嬉々として姉のドレスを着ているようにしか見えないが、バルテレミーには無理やり着せているように見えるようだ。何とも凄い目をしていると変な感心をしている子息は少なくなかった。

更には、リュシエンヌの美しい容姿やプロポーションよりもナディーヌの方がいいようで、そんなバルテレミーに信じられない顔を周りの子息たちがしていることにすら、バルテレミーは全く気づいていなかった。







そんなことが続くうちにリュシエンヌは、バルテレミーから婚約破棄をしたいと言われるまで、そんなに月日はかからなかった。

それこそ、それを直接聞いても特に驚くこともなかった。むしろ、破棄になることに喜びを爆発させたくなる自分がいた。それを我慢する方が、何倍も大変なことを誰も知らなかった。そして、そう思う自分が嫌だと思うことになるリュシエンヌにも気づいていなかった。

ただ、婚約を破棄したバルテレミーと妹のナディーヌが婚約することになったことには、少なからずリュシエンヌは絶句してしまった。


「バルテレミーが婿入りすることに変わりはなくて本当によかったな」
「そうね。リュシエンヌよりも、ナディーヌの方がいいと思うのだから、この家も安泰でしょうね」
「……」


両親の言葉にリュシエンヌは、何とも言えない顔をしていた。

そんな姉の顔を見て、ナディーヌは意地悪い顔をして、こう言ってきた。


「そういうことだから、お姉ちゃん。さっさとどっかに嫁いでね。まぁ、誰も、お姉ちゃんみたいに愛嬌のない令嬢なんて婚約者には欲しくないだろうけど。そうなったら、この家の迷惑になる前に修道院にでも入ってよね」
「……」
「そのくらいお姉ちゃんなら、妹に言われる前にするところよね？　わざわざ、言ってあげるなんて、私ってばなんて優しいのかしらね。そう思わない？」
「……」


まさか、バルテレミーの婿入りが継続されているとは思っていなかったリュシエンヌは、ナディーヌだけでなくて両親も、そのつもりなことに驚かずにはいられなかった。

それこそ、ナディーヌの成績は酷いとしか言いようがないことを両親は知っているはずだが、それを愛嬌があれば何とでもなると本気で思っているようだ。

バルテレミーは、リュシエンヌが何かと尽くしていたこともあり、試験のヤマを毎回こっそりと教えていることで、順位は中間より上に常に位置しているに過ぎないのだが、それを知らないせいで誤解しているようだ。