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しおりを挟むリュシエンヌが、妹のことをどんなに無視していても、譲ると言うまでナディーヌはしつこかった。そんなところは、母親に似ていると思っていた。
母親が、別の夫人にしつこくして譲ると言うまでネチネチして言い続けているのを見たことがあったからだ。
一番似なくてもいい部分がそっくりで、そのうち泣き出すナディーヌに面倒くさくなって、リュシエンヌはため息をつきたいのを我慢して譲ると言うとそれはもう嬉しそうに大はしゃぎするのだ。
そんなことばかりをするナディーヌから、どうしたら興味を持たれなくなるのかと思うようになっていたが、妹が何を考えているのかがリュシエンヌにはさっぱりわからなかった。
なぜ、毎回、リュシエンヌが手にしてから欲しがるのかがそもそも理解できなかったのだ。本当に欲しいのなら、そんなことする前に買い占めてしまっていればいいとすら思うのだが、ナディーヌはリュシエンヌが悔しがるのを見てからでないと意味がないと思っているのかも知れない。
もう、悔しいなんて気持ちがリュシエンヌには残っているかわからなくなっていた。面倒くさいとか、煩わしいと思うばかりだったが、それすら希薄になり始めていたが、本人は気づいていなかった。
リュシエンヌの心が我慢の限界をとっくに越えていることにも、両親は全く気づいていなかった。
「全く、リュシエンヌがさっさと譲ってやればいいのに」
「そうよ」
「お姉ちゃん、ありがとう! 大事にするわ」
「……」
両親は、よかったわねと言い、リュシエンヌのことが本当に大好きだなとナディーヌに言って、にこにことしているが妹が言葉通りに大事になんてしたことはないのをリュシエンヌはよく知っていた。
両親の姉が大好きという言葉にリュシエンヌは、これでもかと眉を顰めていた。
そんなわけ絶対にないとリュシエンヌは声を大にして言いたかったが、それを言ったところで疲れるだけだと思い言葉にしたことはなかった。そんなことをリュシエンヌがしても、両親の耳にはその訴えが違うように聞こえて、そう仕向けるのが上手いのもナディーヌだった。
前は、リュシエンヌのことを心配した面々がリュシエンヌに色んなものをくれているのを妹がくすねていたが、そんなことをしていたことをリュシエンヌは知らないままだったが、それがなくなりリュシエンヌが持っているものを欲することで、ナディーヌは姉に勝っていると優越感に浸っているようだ。
だが、リュシエンヌはそんな妹に負けているとは思っていなかった。ただ、ひたすらにどうして、そんなことをし続けるのだろうかと疑問に思う程度で、それがどうしたら興味をなくして、別のことをするようになるのかと思っていた。
でも、その別のことも、他の人が迷惑するようなことになるくらいなら、このまま自分が標的になる方がマシだと思ってもいた。
妹のわがままに振り回される他人をリュシエンヌは見たいとは思っていなかった。そんなことで、楽になるなんてことを望んではいなかった。
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