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しおりを挟むリュシエンヌが、再会した同じ年頃の子は、どこかいいところの子供のようで、常に護衛がいた。
前に出会った酷い男や手下が捕まったあたりから、リュシエンヌと一緒にいても護衛の姿はリュシエンヌの視界に入らないようになっていた。リュシエンヌを警戒する必要がないというのとリュシエンヌが怖い目にあったことがわかったからのようだ。
子供同士だというのにやけに警戒している護衛にリュシエンヌは、色々あって怖がってしまったが、あの男たちに比べたら怖いことは、あれ以来起こることはなかった。
その子とリュシエンヌは、とても仲良くしていた。花が好きらしく、あの日以来、毎日飽きもせず花摘みをしたり、追いかけっこをして遊んだ。二人で遊ぶのも限りがあるはずだが、それでも毎日遊んでいても、ちっとも飽きることはなかったのだ。
あの男たちのように花を持って帰ろうとしないので、リュシエンヌもその子と遊ぶ時は花を摘んで帰ることをしなかった。何より、街の中では血眼になって花を探す者が増えていて、持ち帰るのを見つけたら、何かしら声をかけられていただろうが、それをリュシエンヌがしなかったことで声をかけられることはなかった。
少なくとも、リュシエンヌはそんな日が続くことになっても、飽きたと思うことはなかった。その子と遊べることが、楽しくて仕方がなかったリュシエンヌは笑顔が再び増えることになった。
「君は、何色が好き?」
「私は、あなたの瞳の色が好き!」
「っ、私も、君の瞳のような緑が好き!」
「一緒ね」
「うん!」
その子は、肩辺りまである金色の髪をしていて、とても綺麗な青い瞳をしていた。
リュシエンヌは茶色の髪が肩の下あたりまであって瞳は緑色をしていた。
お互いの瞳の色が好きな色だった。少なくともリュシエンヌに深い意味はなく、その子の瞳の色が美しくて、大好きな花と同じ色をしていることもあり、更に好きな色になっていただけにすぎなかった。
好きな花、好きな色。自分と遊んでくれる唯一の友達。楽しいことを共有できる存在。
リュシエンヌにとって、拠り所となっていくのに時間はかからなかった。家に帰ると妹によって、リュシエンヌに良くしてくれていた使用人たちは、いつの間にか辞めさせられていた。その代わりに入って来た使用人たちは、リュシエンヌと一緒に遊んでくれることもなければ、用もなければ話しかけても来ない人たちばかりになっていた。
そんな日常の中で、外で友達と過ごすことでリュシエンヌは笑えていた。まだ、意識せずに笑顔があったが、それもその子といる時だけだったというのにその子は何も言わないまま、再びその花畑に来なくなってしまったことで、リュシエンヌの胸の辺りにヒビが広がるような痛みを覚えてしまったがその意味リュシエンヌにはよくわからなかった。
教えてくれる人も、その変化にすら気づいてくれる人も、もうリュシエンヌにはいなくなってしまっていたのだ。
ただ、心の中に黒いしみが増えて、ヒビまでできてしまい、それを癒す人がリュシエンヌの周りには誰もいなくなっていた。
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