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しおりを挟むそのまま乱獲する者たちを野放しにして、他国で栽培しようとする面々に根っこごと持ち去られては、ここもいずれ荒野原になるだろう。
花だけを摘んでも、また、いずれ咲くのが当たり前だったが、それが今は少しずつ違うようになっていることにリュシエンヌは気づいていなかった。
何より、リュシエンヌの望むままに抑えられて咲く花に誰も気づいていなかった。本人すら、それに違和感を覚えてはいなかったのだ。
リュシエンヌは、覚えている容姿を教えたところ、それに心当たりがあったようだ。
「やっぱりな」
「ここから、国境を超えるどころか。運んでいる間に枯れるのが落ちだというのに懲りない連中がいたものだ」
「え……?」
それこそ、枯れると聞いてリュシエンヌは物凄く驚いてしまった。
「どうしたの?」
「……ううん。何でもない」
リュシエンヌが摘んだ花は、しばらく枯れることなく部屋に飾られたままになるのだ。なのに根っこがついたままなのに移動中に枯れると聞いて、首を傾げずにはいられなかった。
だが、護衛たちは、リュシエンヌから聞いた情報を元にして、刈り取って移動しているのを見つけて捕まえることができたのは、この話をした数日後のことだった。
それを後になって聞いて、リュシエンヌは心からホッとした。
もう、たくさん咲いていても、刈り取られて丸裸にされることはないと思って、数日してたくさんの花が咲き乱れる場所が増えていき、そこでその子と以前のようにたくさん遊ぶようになった。
もっとも、リュシエンヌのお気に入りの場所のみで、他の場所が以前のようにどこでも花を見かけることが当たり前だったことが、嘘のようになったままだったが。
そのせいで、街の人たちは、ぼやいてばかりいた。
「これじゃ、商売があがったりだ」
結婚式をあげたがる者が減って、観光客も減る一方となったのだ。
小さくとも世界で一番美しい花のブーケで、無理やり挙式をあげた面々は、信じられないほど凄い勢いで破局することになった。
そのため、ジスカールで結婚式を無理やりしたがる者がいなくなっていくのも、かなり早かった。
とんでもない醜態を晒したエピソードが、両の手では足りなくなったのだ。
段々とこの国でしか咲かない花をブーケにしても、幸せになれるのかは怪しいものだとなり始めたのだ。
「あの国に行っても、お目当ての花が咲いていないんじゃ、行くだけ無駄になりそうよね」
「むしろ、たくさん見れないと幸せになれないらしいぞ」
「それは不吉ね。新婚旅行は、別のところにしましょ」
そんな風に言われるようになり、新婚旅行も、普通の旅行も、ジスカールをわざわざ選ぶことがなくなり始めた。
元々、その花以外にこの国では他に大したものはなかったのだ。食べ物が美味しいわけでもないし、街並みが美しいわけでもない。流行りものも、他の国のものばかりで流行遅れなものが、いいとこ取りしたような物しかなかったのだ。
それでも、観光客がたえなかったのは、花のおかげでしかなかったのだが、その花がなくなってしまえば特産も名物もないジスカールには大打撃になるのだが、一時的に咲かないだけだと思う人の方が多かった。
何かをしなくとも、勝手に咲き乱れる花で、ジスカールでのみ咲く理由を解明する者は、この国にはいなかった。
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