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リュシエンヌは怖い思いをしてから、別の場所で花を摘むようになっていた。そうなるまでにかなりの日数が経っていた。それでも、花に囲まれている方がリュシエンヌは落ち着けた。


「たくさん咲いている場所なんて探せば、すぐ見つかるのにどうして、あんな酷いことをするのかわからないわ。私が先に見つけた場所なのに」


前の場所のことが気になって見に行ったら、リュシエンヌが花を摘んでいたのが嘘のように一輪も咲いていなかったのだ。

何があっても、次の日には何事もなかったように咲いている花が、咲いていなかったのだ。

その光景が、リュシエンヌの目に鮮明に残ることとなった。


「っ、」


全部を刈り取ってしまったのだと思い、リュシエンヌは悲しくなって、それを見て涙がこぼれ落ちるのを我慢できなかった。その場でリュシエンヌは膝をついて泣き崩れて、しばらく動くことができなかった。

リュシエンヌは、この日生まれて初めて泣き叫んだ。








「……」
「どうした?」
「なんか、変な感じだわ」
「?」


リュシエンヌが、悲痛な叫びを上げていた日。ジスカールで、いつものように結婚式が執り行われていた。

その日、結婚をした花嫁は何組もいたが、みんながみんな不思議な感覚に苛まれることになった。

ブーケを持った途端、何とも言えない感情が沸き起こってきたのだ。


「っ、」
「ちょっと、どうしたの?!」


ある者は泣き崩れ、ある者は式の間に立っていられなくなり、そして悲痛な叫びをあげたのだ。


「どうしたのかしら?」
「さぁ?」
「でも、こっちが悲しくなる声ね」
「確かにそうね。あの声は、これから結婚式が始まるって声じゃないわよね。どちらかというとその結婚式ができなくなったみたいな声よね」


そんなことを式が始まる前に揃っていた出席者たちが話していた。

緊張で、新婦の気でもふれたのかと思われることになったが、花を手から離すと何事もないようにケロッとしたのだ。

新婦は、目をパチクリとして首を傾げてまでいた。


「どうなってるんだ?」
「きっと、緊張しすぎたのね。少し休めば大丈夫よ」


だが、その花のブーケを持つとおかしくなってしまい、これでは結婚式が終わらないのではないかとなり、新婦は気がおかしくなりそうになりながら必死に式が終わるのを耐えることになった。

その姿は、百年の恋も覚めるような血走った目をしていたり、鼻息荒くしていたり、イライラしている姿をしていて、新郎は誓いのキスをする時に腰が引ける者が多かった。

そんな姿を目の当たりにしたことで、新婚旅行も盛り上がらないままとなり、その後の新婚生活も、何とも言えない距離感が埋まることはなかった。

幸せいっぱいの結婚式となるはずが、その日を堺に次々とおかしなことが起こることとなるとは、誰も思ってもいなかった。

何より、なぜ、そんなことが起こり始めたのかに気づく者が現れることはなかった。


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