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しおりを挟むリュシエンヌの周りで、彼女のことを大事にしてくれて心配してくれる人たちがいた。彼女は、そんな人たちに陽だまりのような笑顔を見せていた。心の芯から温まるような笑顔で、使用人たちはみんなその笑顔が大好きだった。
「リュシエンヌ様の笑顔を見れるだけで、他なんてどうでもよくなるわ」
「本当ね」
「不思議な方だわ」
本来なら、両親から与えられる愛情を与えられず、いないかのようにぞんざいに扱われているというのにリュシエンヌは、それに何か言うこともなかったのだ。甘えたいと思うはずなのにそれすらしないで、子供らしくない聞き分けの良すぎる子供になっていた。
そうならざる終えなかったにしろ。リュシエンヌは、それで泣き叫ぶことは一度としてなかった。両親が、妹ばかりを可愛がろうとも、娘がその妹しかいないかのようにしていようとも、リュシエンヌは自分も同じようにしてほしいと口にすることはなかった。
そんなことを言ったところで、そうしてくれないことも、それで誰を困らせることになるかに気づいていたからなのかも知れないが。
リュシエンヌは、お気に入りの場所でよく花摘みをして過ごしていた。
他国では、その花が世界で一番美しい花として有名になってしまっていることも知らず、リュシエンヌのお気に入りの場所には、その花が常に咲き乱れていた。
国中で、その花は咲き乱れていたが、密集して咲いているところは滅多になかったのは、それで金儲けしている者たちがいたからだ。
季節も関係なく、ここ数年は年中咲くようになっていたが、それで散々なことを言われていたはずが、今はそれとは真逆に歓迎されたかのように咲いているのを喜ばれるようになっていた。
そんな街中の人たちの思惑も、他所から来ている人たちとも、リュシエンヌは会ってもいないし、話してもいないのだが、リュシエンヌはその花のことで色んなことが起こっていることを感じ取っていた。
その花が笑顔の中心にあることが嬉しくて仕方がなかった。
その花に囲まれていれば、どんなことでも耐えられる。そんな気がしていた。なぜ、そんなことを思うのかがわからなかったが、リュシエンヌの笑顔が曇ることはなかった。
リュシエンヌにとっては、その頃は見慣れすぎた当たり前の光景になっていた。
一人で花畑にいても楽しくて仕方がなかったのだ。リュシエンヌは花冠を作ったりして遊んでいたが、誰かとお気に入りの場所に来たことはなかった。
誰かと共有したいと思ったことはなかったが、そこに誰かが来たら、どう思うかなんてリュシエンヌは考えてもいなかった。
そこに一人でいても、寂しいとも、悲しいとも、つまらないとも思わなかったのだ。ただ、その花に囲まれているだけで、リュシエンヌは心が満たされていた。不満なことなど何もなかった。リュシエンヌにとっての世界は、花が中心だった。子供のリュシエンヌは、それで満足していた。今は、それだけで十分だと思っている。
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