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しおりを挟むリュシエンヌは、母親に育てられずに世話はもっぱら使用人がしてくれていた。
そのため、物心がついた頃には、常に一人遊びをよくしていたが、それに不満はなかった。
2つ下に妹が生まれて、両親は下の子の方が可愛くて仕方がないようで、リュシエンヌのことなど放置していた。以前から、リュシエンヌに関心が薄かったが、更に薄まったようだ。
「なんて、可愛いのかしら!」
「そうだな。我が家に天使がやって来てくれたな」
両親は、上の子のことなど、最初からいないかのように末の子を可愛がった。
その頃はリュシエンヌの周りにはリュシエンヌのことをきちんと心配してくれる人がいた。
「リュシエンヌ様。お部屋に戻りましょうか」
リュシエンヌは、こくりと頷いて使用人に手を引かれて部屋に戻った。そんなことを何度もするうちにリュシエンヌは、妹と違う扱われ方をしていることに疑問を持つようになった。
それでも、四六時中リュシエンヌに使用人たちは構っていられないため、その人たちが仕事ができるようにリュシエンヌも、一人で遊ぶことを覚えて毎日やり過ごしていた。
妹と自分の何が、そんなに違うのかがわからないリュシエンヌは、なぜ自分のことを構ってくれないのかすらわからなかった。
元々、両親に構われたことがないのだ。ただ、不思議でならない気持ちがリュシエンヌの中に残ることとなった。
血の繋がりがあるはずなのに。それが希薄なのだ。
似ていないを通り越して、全く別もののようになっていることに首を傾げずにはいられなかった。
だが、それでもリュシエンヌは、あの花を見ているとどうでもよく思えてしまった。花を見ているだけで、笑顔になっていた。
「おい! そんなところで、花摘なんてするな!」
「っ、」
リュシエンヌは、父親にそんな風に怒鳴られて、肩をビクつかせた。
「そんなことしているのを妹が見たら、真似するじゃない。そんな雑草なんて摘んで何が楽しいのよ」
母親にまで、そんなことを言われ、リュシエンヌは悲しげな顔をしたが、近くにいた使用人たちがリュシエンヌを見ていなかったとその後で怒鳴り散らすのを見て以来、二度と庭で花摘みをすることをしなかった。
自分が叱られるからではなくて、自分のせいで関係ない使用人が怒られるのを見たからだ。彼女たちは何も悪くはないのだ。そんな姿はもう見たくないと思って二度としなかった。
そのため、少し離れた場所でお気に入りの場所を作ったリュシエンヌは、そこであの花に囲まれて過ごすようになったのは、すぐのことだった。
秘密基地を作ったことを知らない使用人たちは心配してくれたが、遠くに行かないで両親に見つからない場所で遊んでいると思ったようだ。
それが、リュシエンヌにとっての普通で、楽しくて仕方がないこととなっていて、寂しいと思うことは一度もなかった。
何より笑顔が増えたリュシエンヌを使用人たちは喜んでいて、無理にその場所を追求することもしなかった。
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