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しおりを挟む花の咲き乱れる理由にようやくたどり着くことになった植物学者は、二人が再び巡り合って今度こそ、幸せになれるように何かしらしてやりたいという思いにかられていた。
彼の血が、その真実を知って騒ぐのだ。答えにたどり着いたことで、何かを喜んでいるのを感じたさていた。もしかするとどちらかの子孫なのかも知れない。
あの花に共感する者たちは、その血が濃いのだとしたら、感極まるのも無理はないとすら男は思い始めていた。
「おとうさん」
「っ、」
「どうしたの? どこか、いたいの?」
泣いている父親を見つけて、年端もいかない彼の息子は悲しげにしながら、とてとてと歩いてきた。いつも見てくれている祖父母たちのところから、ここまで一人で来てしまったようだ。
それこそ、いつもいい子にしている息子が珍しいと思いながら、泣くのを見られまいとしていたが、止まりそうもなかった。
そんな父親の焦りに気づいているのか。いないのか。ペタンと座り込んで、こてんと首を傾げて父親を見つめた。その瞳は澄み切っていた。
「っ、」
金色の髪と青い瞳の美しい息子は、曾祖父譲りの髪と瞳をしていて、父親には少しも似ていなかった。母親とも、似てはいないが、見目麗しい息子を両親も、祖父母も溺愛してやまなかった。
その純粋無垢な青い瞳が、ジスカールのあの花を思わせて、太陽に当たると煌めいて別の色を思わせた。それが、想い合う二人と重なってしまい、父親は息子を見て再び涙した。
「いたいたなんだね」
「っ、」
よしよしと幼い息子に頭を撫でられて更に情けなくも、我が子に縋り付くように泣いてしまった。これでは、どちらが親かわからない。
元々、幼いながらも、息子には包容力が並外れてあった。それが頼もしいようで、将来が心配なところもあったが、その中でも人を気遣う部分は他の子供とは比べられないほどあった。
幼いながらも、泣き叫んでわがままを言うこともなく、大人たちが困らないようにしているところがあって、大人びすぎているのだ。子供の頃くらい、子供らしくあってほしいと思っていても、それが今はありがたいと思う日々を送っていた。
そんな息子は、父親がスケッチした花を見つめた。
「かのじょだ!」
「え?」
突然、叫んだ息子にギョッとしたが、何の事かを聞く前に息子は高熱を出してしまい、生死の境を彷徨うほどになって、その出来事は有耶無耶なままとなった。
何より、息子の一大事となって、妻は元気になり、息子のことを心配するようになった。それは、驚くべき回復力だったが、それに驚いてばかりはいられなかった。
息子は高熱が引いてから、ぼんやりとばかりしてしまっていて、熱で頭をやられたと周りに思われて心配されることになったのだ。
そんなことがあったことで、その男性も息子のことが気が気でなくなってしまい、花のことも、文献のことよりも、息子が大事になってしまった。
何かしたいと思っていたこともできないまま、月日がすぎることになった。
息子から片時も目が離せない状態が長く続くことになって、妻の体調がよくなったのを喜んでいられない状態となったのだ。
あの花を見にジスカールに家族で行くこともできなくなってしまったのだ。
そのうち、花のこともすっかり忘れ去って、息子が元気になることだけを考える日々を送ることになった。
息子が父親のようにあの花に魅了され、ジスカールに花を見に行くまで時間がかかることとなった。
熱にうなされながら、彼はずっと悪夢に苛まれていたが、それがどんな悪夢なのかを家族の誰にも話すことはなかった。
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