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しおりを挟むそれが、他国には物珍しくこの世界でもっとも美しいと言われることに不思議そうにしている者はジスカールでは相変わらず多くいた。それは、変わることなく、平行線のままだった。
それでも観光客のおかげで経済が潤い始めたことで、そんな花のどこがそんなにいいのかを大きな声で言うのもはばかられるようになるのも、すぐのことだった。
更には、下手なことを言えば、それで雇ってくれているところから首を切られることになるのだ。黙る者が増えるのも無理はない。
だが、雇われていない者たちは、相変わらず、好き勝手なことを言うのをやめない者も中にはいた。
「どこにでも咲いているあんな花が、そんなに美しく見えるなんて他所の人たちは、どこかおかしいんじゃねぇか?」
「ちょっと、そんなことを他所の国の人に聞かれでもしたら、商売している人たちにどやされるわよ」
「あの花を摘んで売り歩くだけで、お金になるから、こぞって摘んでしまうのよね」
「敷地の中にまで勝手に入って来るから困るんだよな」
それでも、ほっといたらしばらくすれば勝手に咲き始めるのだ。そんなのを珍しがることが、この国の人々には理解できなかった。
何をしても勝手に生えてくるのだ。雑草よりもたちが悪いと思って何が悪いのだとすら思っていた。そんな花の何が他国の者に珍しく見えて、なおかつ美しいと言わしめて虜にしているのかがわからない者ばかりだった。
それをどんなに持ち帰ろうとしても、上手くできないなんてことをみんな知らなかったのだ。
それを試すのは、他所から来た人々だけだったせいもある。それができるようになってしまえば、金儲けに使えなくなるのだ。それを必死になって、持ち帰ろうとする面々が上手くいかないことを喜んでも、手を貸そうとする者が現れることはなかった。
金儲けになると言われても、そこに住む人たちにとって美しい花という印象よりも、どこにでも咲いている花でしかなかった。更には、雑草と大差ないと見ている者は今も少なくなかった。
その花を好み美しいと思っているのは、ジスカールで少数しかいなかった。それこそ、そんなことを言うと眉を顰められて奇妙なものを見るような目をされるため、口に出すことをしなかったようだが。
そんな中で、ジスカールで生まれたとある少女がいた。その少女こそ、その国で花が咲き乱れるきっかけとなっている見目麗しい少女なのだが、その事実を本人も周りの誰もが知りもせず、気づいてすらいない状況が続いていた。
彼女が生まれた時から、彼女が忘れ去ってしまった想いを、願いを成就できるようにと花が咲き乱れるようになったのだが、その強い想いを彼女は未だ思い出してはいなかった。
そんな彼女を邪魔する者は、彼女が気づかないうちに再び周りに存在していたが、そのことにすら気づくことはなかった。
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