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しおりを挟む他国の若い娘たちを中心にして、結婚式をジスカールであげたがっているという噂を聞きつけたジスカールの者は、すぐさま行動した。
それは、純粋に式を自分たちの国でしてほしいからではなかった。彼らは新しい金儲けになりそうだと思ってのことだった。それこそ、他に知られる前にいち早くこういうことは動かなければ、出遅れると思って動いただけで、その早さもお金が絡んでいたからに過ぎなかった。
信仰心なんて欠片もないがみすぼらしい教会では結婚式をしたがらないだろうと豪華な教会に改装したのだ。そこをケチっては、駄目だと思ったようで、見違えるほどの教会となった。
そこから、結婚式をこの国でやりたがる面々にすぐさまアピールし始めたのだ。その目は、濁りきっていて、笑顔も胡散臭いことこの上ないものだったが、言葉巧みに式ができることを力説してまわり、その顔や心でとう思っているかなんて聞いている者たちは全く気にはしなかったのだ。
「ちっ、あいつ、稼げると踏んで動いたな」
「私たちも、負けてられないわ」
そんな風に我先にと結婚式が、この国で気軽にできるように奔走する者が現れたが、お金が絡んでいるからこそ、そこまでしているだけであって、見ず知らずの人たちのために汗水垂らし頑張っているわけでもないのだが、ジスカールの者ほど淀んでも濁ってもいない心の持ち主の他国の者たちは、そんなジスカールの人たちを見て感激する者も現れ始めた。
誤解とすれ違いによって、人のいいところしか見ないとこういうことになるようだ。
きっと、心の中を覗ける人がいたなら、どちらもおかしいと思うところだろうが、誰もおかしいと思うことなく、ただ美しい花を持って花嫁になりたいと願ってやまない娘たちが一気に増えることになった。
それは、貴族も、平民でも変わることなく、若い娘たちなら誰しもが、そう思って当たり前かのように世間が変わりだしたのだ。
まるで、昔からそう言い伝えられていたかのようにすら思われるほど、それにジスカール以外の国の人たちにとっては、物凄くしっくりとくることだった。
なぜ、それが今まで流行りもしなかったのかと思うほどに瞬く間に広がっていくことを気持ち悪いと思うのは、ジスカールの中にしかいなかった。
「他所の人たちの頭が、どうかしちまったみたいだね」
「余計なこと言うな。金になるなら、何でもいいだろ」
「でもさ。気味悪くないかい?」
「やめろ。そんなこと聞かれたら、商売にならないだろ」
「……」
そんな風に話すことも、金が逃げていくとばかりに言われてしまい、それを疑問に思っても口にする者はいなかった。
喧嘩して、金儲けから仲間外れにされたら、大変だと思う面々は、深く考えることもやめる者が多くなっていった。ただ、金になればいいとばかりに悪く言うこともせずに愛想よくにこにことすることに努めるだけになっていく者が増え始めたのも、この辺りからだった。余計なことをして、金儲けから離脱したくないがために沈黙することにしたのだ。
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