両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

珠宮さくら

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その花を見たいがために色んな人たちが、ジスカールを訪れるようになっていた。元より来る者拒まず去る者追わずな国であったが、一気に注目のまとになったことに浮かれる者も現れ始めて、愛想よくなる人たちが増えていた。その愛想も、貰えるお金に左右される者ばかりだった。そこが、この国の住人の特徴の一つのようになっていた。みんながみんな、そうではないのだが。

それこそ、ついでに寄り道するのではなくて、メインにジスカールに寄る者たちが、急激に増えたのも、その頃からだった。ジスカールでなくとも、浮かれる人間はどこにでもいるだろうが、この国の人たちの心は他の国よりも、どうにも淀んでいて、あさましかった。

他の国の人たちは、みんながみんなその花の話を耳にするとどうしても、その目で見たくなって仕方がなくなったのだ。見たくて見たくてたまらなくなって、ジスカールに行く用事を無理やり組む者もいたほどだ。死ぬ前に一目でいいから、その花を見たいと願う者まで現れ始めてすらいた。

その殆どが話題の花を見たいと思う者ばかりだったが、中にはその花を見て感激して涙する者もいた。


「なんて、美しいのかしら」
「本当だな。見に来れてよかった」
「えぇ、そうね。二人で見れて本当によかったわ」


老夫婦は、そんなことを言ってお互いの身体を支え合いながらも、感涙の涙を流し続けていた。死ぬ前に最愛の人とその花を見れたことが、嬉しくて仕方がないのだ。自分たちでない何かが、一緒に喜んでくれている気すらした。その何かの想いが未だに成就してはいないのに。我がことのように喜んでくれているのだ。それが、嬉しくて仕方がないのだ。

そう言って胸を熱くさせて泣き出す者も、最近は増えて来ていたが、ジスカールの者たちは白けた目を向けている者の方が多かった。

この世で一番美しい花。それを夫婦で見られることに涙することが、どうしても理解できなかったのだ。そんな人たちを目にして、冷ややかな目を向けていた。


「何も泣くことないだろうに」
「本当だよ。他所の国の連中は、娯楽がないのかね」
「歩くのもやっとみたいなのに。こんなところに来るなら、私なら別のことにお金も時間も使うけどね」
「全くだ。金持ちの考える連中のことなんて理解できないな」


そんな風に馬鹿にしていたが、そんな風に感涙している連中は花を決して買おうとしないため、そんな人たちに花売りたちは話しかけることはなかった。

その花を買うことに酷い抵抗があるようで、そういう者に売ろうとすると怒られたり、怒鳴られたりするのだ。

その花で金儲けをしていて、恥ずかしくないのかと説教までされたりして、そんなことで時間を無駄にしたくないと思い、ジスカールの者たちはみんな涙する人たちから離れるようになったのだも、割と早かった。

だからといって、金でその花を買う者たちに何か言うこともなかったが、信じられない者を見るような目をしていて、泣いている者が近くにいるだけで商売がやり辛くてかなわないと思うほど、面倒でならないし、客にもならない人たちだと思っていた。

ジスカールの者たちは、金儲けになりさえすれば、どうでも良い者しか花を売ってはいなかった。

それでも、その花がこの国から姿を消すことはなかった。


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