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しおりを挟む凛が何とも言えない感慨深いような、そうでもないような気分のまま、寄せ書きや花束を持って歩いていて学校をあとにしようとしたところで、転校すると聞いたらしい湊が慌ててやって来ていたが、彼とは特に話すこともなかった。
(知っても来る気がないと思ってたら、今更誰かに聞いたのかな? そういえば、彼のクラスだけ階が唯一違うから、明穂の騒ぎも知らないってことありそうだな。去年一緒だった子が、あのクラスにいると情報が遮断されてて、時差が半端ないって言ってたし)
だからと言って立ち止まることなく、凛は迎えに来た母親がタクシーで学校まで来てくれていたので、それに乗り込んで駅で父親と合流して新幹線で新しい引っ越し先に向かった。
久々に会った湊は、別れ話をした時よりも間抜けな顔をしていて、凛はおかしくなって笑いそうになってしまった。あの顔は、凛が引っ越しには絶対ついていかない自信があったのに当てが外れたことを物語っていたこともあり、そんな顔が見れて満足だった。
(明穂が他に女友達がいないのも、納得だわ。湊と楽しくしてたみたいだし、付き合ってないのかもしれないけど、私の言葉より明穂の方の言葉を肯定して、私の言葉を否定した時点でとっくに終わってたのよね。何で、気づかなかったんだろ。夏休みの時も、修学旅行の時も、2人で会ってたのを知ってたのに)
凛のカレシだとわかっていながら、明穂は何かと湊と会っていたのだ。
凛が明穂に相談していたことも、悩んでいることも、面白おかしく明穂は湊に話していたようだ。
しかも、引っ越しうんねんの前によそよそしくなったのも、明穂が湊に凛がこっそりと浮気をしているようだと話したことで、彼は疑うようになり素っ気なくなったようなのだ。
それを湊は凛が引っ越すことになったのを黙っていてよそよそしくなったと言っていたのだが、元々仲違いさせて明穂は別れさせようとしていたのではなかろうか。
(私に直接聞くよりも、明穂の話を信じて疑わなかったってことがそもそも両思いではないわよね。明穂は別れさせて、付き合う気だったのかは疑問だけど。それなら、とっくに別れさせられてそうだし。何だか、その辺がモヤモヤするな)
浮気をしているというよりも、共通の凛のことで話をしているだけだとしても、そんなことを凛のいないところで二人っきりでしていたことを周りがよく見かけていたことを知ることになり、あぁして明穂を無視することにしたのだ。
すると途端に罵詈雑言を浴びせかけてきたところを見ると親友だと思っていたのは、凛だけだったようだ。
(親友なんて、何で思ってたんだろ。今思うと不思議なことばっかりだわ。明穂に話すより、カレシがいる友達に相談してればよかった)
そんなことを思って不思議に思っているとスマホが、さっきから通知を知らせて煩いことにようやく気づいた。
(うげっ、これが本性だとしたら、怖っ!?)
通知の相手は明穂ではない。彼女はとっくにブロックしていた。湊からの通知に今更だなと思ってブロックしたのは、すぐだった。
別れ話をしてから、間があっても何の連絡もなかったのだ。それもこれも、別れ話を本気にしていなかった証拠ではなかろうか。
「お友達?」
「うん。言ってない子が、びっくりしたみたい」
「あら、伝えなかったの?」
「しんみりしたくなくて」
凛は、そんなことを言っていたが、しんみりどころではなかった。
他の友達と会えなくなるのは寂しくて辛いが、あの二人に会わなくて済むとなるとホッとしている自分がいた。
(元親友も、元カレも、終わったことよ。問題は、新しい学校と新居のことだよね。行きたいところの編入に受かるといいけど)
凛は、そんなことを思っていた。高校の受験の時も、先生に難しいとか。厳しいとしか言われずにいたが、何とかなったのだ。
今回も、同じように言われたが諦めたくなくて編入試験を受ける気でいた。
「編入試験の心配?」
「あー、うん。今のとこより、偏差値が高いから。それにカリキュラムも充実してるし、途中で入ってついていけるかなと思って」
「大丈夫よ。凛は、高校の時にも、偏差値の高いところに入って、こうして頑張ってこれたんだもの。それに勉強も、遊びもきちんと両立して、学校で色んなことやってたんだもの。絶対に大丈夫よ」
母にそう言われて、凛は自信を少し取り戻した。
「それにここね。修学旅行、3年生は二学期にあるらしいわよ」
「え? そうなの?!」
「どうした?」
父が、声をあげた娘に声をかけてきた。
凛は、前のところでは2年生の時に修学旅行に行っているのだが、編入先の候補がこれから修学旅行と聞いて、父は笑っていた。
「そうか。父さんも、3年生の二学期だったな」
「え?」
「私もよ」
「そうなの? じゃあ、あそこ、修学旅行が早かったのか」
「あそこは、大学がないからな。凛が編入しようとしているところは、中学から大学まであるところだから、3年で修学旅行する余裕があるんだろうな」
「……え? 待って。つまり、私、もう一回修学旅行に行けるかもってこと?」
両親が頷くのを見て、凛は俄然やる気になった。それを見て両親が吹き出していることには気づいていなかった。
(知り合いがいなくとも、何とかなるよね。修学旅行にもう一回行くなんて経験、滅多にできないもの。今度は、班長はやらずに満喫したい!)
現金にも凛は、もう一回修学旅行に行けるかも知れないということを知って、やる気になってしまい、そのおかげか見事、編入試験には合格した。
そのため、とても可愛い制服を着ることになって、修学旅行に行けることになった。
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