彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
22 / 31

22

しおりを挟む

「うげ、久々に見た。あれ、小中の頃によくやってたんだよね」
「え? そうなの?」
「そうそう。名物みたいだった」
「あいつの癇癪な。あれ、自分の思い通りにならにいと暴れまわるって有名だったんだよ」
「……」


明穂と同じところ出身の生徒は、凄い顔をしていた。それを聞いて、凛も眉を顰めずにはいられなかった。


(そんな名物、嫌だな。思い通りにならないと癇癪を起こすって、それ、私が言うことを聞いてたから、癇癪を起こさなかったってこと……? うわぁ~、そんなストッパー役、嫌すぎる)


廊下で騒ぐせいで、先生に何か言われたようで、それでもやめずに暴れまわったようで連れて行かれるのを見ることになった。

何やら凛のことを連呼しているとなって、先生に呼ばれもしたが、転校することが気に入らないらしいと伝えると話し合えと言われたが、あちらが転校をやめさせようとばかりして、あの状態だと凛だけでなくて、クラスメイトも証言してくれて、話し合いは難しいとわかったようだ。


(あんなに暴れてるの見たら、話し合いなんかで落ち着くとは思わないわよね。……むしろ、これまで、よく隠していたものだわ。あー、その分、私が、いいように言いなりになってたからだとしたら、腹立って来るな)


ただですら、あと少しのここでの学校生活な凛は、そんなことでクラスメイトとの楽しい時間を邪魔されたくないと言うと先生方は、そうだよなと納得してくれた。

凛は、それまで色んなところを転校してきたエピソードを聞かれるままにクラスメイトたちに話して、男子生徒たちとも仲良くなれた。


「凛さんの話し聞いて、俺も転校したことあるからよくわかるよ」
「転校生あるあるなんだな」
「でも、俺一回だけだから、凛さんには遠く及ばないよ」
「及ばないって言うか。凛、転校しすぎじゃね?」


辛くないのかと聞かれたりしたが、凛は……。


「あー、辛くないことはないけど、高校卒業するまでは、家族は一緒に暮らすっていうのが我が家のモットーだから。人生長いから、高校くらいまで思いっきり親孝行しとけば、あとは楽かなと」
「すっけぇ~いい話かと思ったけど、後半で台無しだな」
「いや、でも、これから長い人生あるんだから小学校から高校までに親孝行してるだけで、あとの60年くらい好き勝手して生きれるとなれば、大したことないでしょ」
「あ~、確かに」


そんな風に色々と話して、お別れの時は女子はみんな涙目で、男子ももらい泣きしている生徒もいたくらいで、そんな中で一番泣いていたのは……。


「凛さんがいなくなると寂しくなるよ~」


担任が一番泣いていた。それに凛だけでなくて、クラス中がドン引きしたのは悪くないはずだ。いや、これだけ転校することを嘆いてくれているのは嬉しいことなのかも知れない。


「凛さんは、何でも引き受けてくれてたから、クラスが殺伐としなくて他の先生方にも羨ましがられてたんだよ」
「……」


担任のぶっちゃけたことに凛だけでなくて、クラス中が微妙な空気になってしまったが、担任はそれに全く気づいていなかった。悪気はないのが一番悪い気がする。


(まぁ、なんだかんだあったけど、こんな風にお別れするのも、悪くないな。前までのお別れ会は、あっさりして思い入れも何もないようにしてたから。ここでは、思いっきり青春した気がするな)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

片思いに未練があるのは、私だけになりそうです

珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。 その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。 姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。 そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...