21 / 31
21
しおりを挟む凛は転校することにしたことを明穂や湊に直接話すことはなかった。
明穂とは絶交すると伝えようかと思ったが、わざわざ伝えに行くのも嫌だと思って、無視することにした。もとより、彼女にとって親友とは思われていなかったようだ。そこで絶交宣言も悔しく思い、もとから親友でないことにしたのだ。
(まぁ、私が転校のことを話さなくとも、そのうち耳に入るだろうけど。あれだけしておいて、今更、私のところに来ないわよね)
だが、聞きつけた明穂は凛の教室まで来て何かと言って来るのは早かった。
それに凛は、眉を顰めずにはいられなかった。
(は? どの面下げて来れるのよ!? というか、普通に来すぎじゃない? 何なの??)
湊に先に話して聞かせていたのは明らかに明穂なのにそれについて凛に謝罪も何もないまま、転校をどうにかしてやめさせようとしたのだ。
その物言いの仕方があまりにも酷くて、凛はイラッとしてしまった。
「凛。転校なんてして、大丈夫なの?」
「……」
「絶対、迷子になるだけだって。それに卒業まで1年もないんだよ? この時期に転校することはないでしょ? 考え直しなって」
「……」
明穂が引き留めようと色々言っていたが、凛はそれらを全て無視することにした。
(そういえば、いつもこんな感じだったな。何で、こんな感じなのを親友だと思って信頼してたんだろ。不思議だわ)
最初は、無視する凛にクラスの面々は喧嘩でもしたのかと思っていたようだ。
「ちょっと、無視することないでしょ!」
そのうち、凛に当たり散らすかのように明穂は怒鳴り散らすようになり、それでも煩そうにしているのを見て、凛がわざと無視しているのに気づいたようだ。
どう聞いていても、凛のためというよりも、自分が困るみたいに言うばかりの明穂。それを無視する凛を見て、ただの喧嘩ではないと思ったようだ。
元より明穂はあまりよく思われていないのもあり、察するものがあったようだ。
他の友達が凛に話しかけてきたのは、すぐだった。これまで、明穂がいるとそそくさと離れて行っていた面々だ。
「凛。転校するなんて、寂しくなるよ」
「本当だよ。向こうでも、頑張ってね!」
「私も、寂しいよ。でも、私、これまで両手にあまるくらい転校してるから、大丈夫だよ」
他の友達に話しかけられて、凛はにこっと笑いながら返した。
「え? そんなにしてるの!?」
「してるよ。学期ごとに転校したこともあるし」
「それ、凄く大変そう」
「そうかな? それって、夏休みの宿題やらなくてもいいってことじゃないの? 前のとこに出すわけでもないんでしょ?」
「あー、え? その辺は、どうなの?」
「前のとこと新しいところの宿題をやって、どっちにも出したよ」
それを聞いて、友達だけでなくて、クラスの人たちにも聞こえたらしく、みんな凄い顔をしているのを見て凛は笑ってしまった。
(そうだよね。普通は、どっちもやるはめになるなんて思わないよね)
それをやった時は大変だったが、今では楽しい思い出だ。そんなことを言われたのは、一度きりだ。きっと、転校が決まるタイミングが悪かったのだろうが、それも父に異動を命じた人が悪いのは明らかだった。
そんな風に思って、なつかしんでるとその間も、明穂は凛に怒鳴っていたが、周りはそんな明穂に怪訝な顔をしたり、眉を顰めているばかりだった。
(明穂って、こんなに口が悪かったんだ。それに自分のことばっかりで、私の心配しているって言うより、今後の自分がお一人様になるのが嫌としか聞こえないんだよね。これが本性だったんだろうな。私、何で、この子のことを親友だなんて思ってたんだろ。不思議だな)
そのうち、クラスの雰囲気が悪くなるからと明穂が教室に入るのを拒まれるまでになり、廊下で騒ぎ立てていて凄かった。
90
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

片思いに未練があるのは、私だけになりそうです
珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。
その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。
姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。
そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる