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しおりを挟むさっさと別れることにしてよかったと思っても、もっと早い方が断然良かったと後悔することになっても、別れたことで後悔することは全くなかった。
むしろ、スッキリして清々しい気分にすらなっていたこともあり、その後で両親が新しい高校をどこにするかで話す会話の方が楽しくなっていた。
何より、凛のために考えながら、自分たちも楽しむ両親が好きだと思えてならなかった。
そんな風に楽しめるからこそ、どこに行っても前のところと比べても、今いるところも素敵だと笑いあえるのだろう。
まぁ、良いところだけでなくて、たまに嫌なところを比べたりもするが、この家族は良いところを比べる方が多くて、嫌いなところをよりどうしたら良くできるかを考えるような両親なのだ。
そんな両親の元で成長してきた凛は、親友やカレシに浮かれて、本来の楽しみ方をすっかり忘れていたと思ってもいた。
「凛は、どこか気になるところはあるか?」
「ん~、あ、ここの制服、可愛い!」
「凛。制服で決めるのは……」
「あら、私もそこが一番可愛いと思っていたわ。凛に似合うわよ」
「そ、そうかな?」
「絶対に似合うわ。今の高校のも、可愛いけど。お母さんは、こっちの方が凛には合ってる気がするのよね」
「っ、」
制服で学校を選ぶことに父は眉を顰めていたが、母はケロッとしていた。
凛は制服の可愛さに目をキラキラさせて、母の言葉にも嬉しそうにしていた。
「……母さん」
「あら、あなた、今は制服で選ぶのもありよ。大学で何がしたいかを探す人もいるくらいだもの。凛が、何をしたいかをしっかり見つけられるなら、制服だけから入ってもいいじゃありませんか」
「……そうか。そうだな。確かにこの制服は、凛に似合いそうだな。……スカートが短いのが気になるが」
(柔軟な対応って、こういうこと言うのかな? でも、いいな。やっぱり、相手の話をきちんと聞いて、理解し合える関係って)
凛は、両親のような関係をずっと続けられる人と次は付き合いたいと思っていた。気が早いかも知れないが、ずるずると悩み続けるよりもいいかと開き直るのも早かった。
だが、父はカリキュラムについてしっかり把握していたらしく、凛にしっかりとオススメの学校をプレゼンすることを忘れはしなかった。
そんな父に負けじと母も、オススメをプレゼンしてきて、凛はいつしか真剣になって聞いていた。
母は今は専業主婦をしているが、凛が生まれる前までバリバリのキャリアウーマンだったのだ。仕事は父よりできているくらいだったらしいが、将来を期待されていても、夫を支え、家族と過ごすことにしたようだ。
それでも、こうしてプレゼンをしているのをきいてると全くその手腕が衰えていない気がしてならなかった。
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