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しおりを挟むそんなこんなで、付き合い始めて1年がすぎると湊といても、微妙な空気がよく流れるようになっていた。
「悪い。これから、用事あるから、ここまででもいいか?」
「え? あ、うん」
「じゃあな。気をつけて帰れよ」
「そっちも」
「おー」
「……さて、帰れるかな」
なんてことを出かけた先で突然、言われるようになり、そのうち……。
「じゃ、ここで」
「え? ここ??」
「用事あるんだよ」
「そう、なんだ」
凛は、そんなことを言われて内心で、こんなことを思っていた。
(なら、デートなんて無理して組まなくてもよかったのに。こっちだって、色々と忙しいの知ってる癖に。予定あったの頑張ってあけたのにこれで終わりって、何なの?)
そんな風に思うようになっていた。何というか、夏休みにこれでもかと予定を組んでしまった名残りなのか。修学旅行ですれ違い続けたせいか。文化祭で、サボっているのは知っていたが、忙しくて探すことすらしなかったせいか。まだ、付き合っていることが、おかしなことになっていた。
月に何度かデートしないといけない雰囲気になっていたが、凛が忙しくしていたこともあり、3年になってからは、おざなりな感じになっていた。
彼の方は凛と違って面倒なことは一切やらないようにしていて、積極的に学校の行事に参加していることもなく、クラスに貢献するようなこともしていなかったことで、すれ違いの日々が続いていた。
そんな風にどこかに出かけても、段々と凛を家から離れたところで別れるようになっていた。
それでも、本当は他に何かしらの用事があってのことだと凛はずっと思っていた。そう、珍しく何かを始めたのかも知れないとすら思っていた。
だけど、最近は……。
(なんか、妙によそよそしいんだよね。気のせいではないはず)
凛は、カレシとそんなことになっているのもあって、父から転勤の話を聞いても、このまま残る方がいいのか。両親とこれまでのように引っ越して着いて行った方がいいのかがわからなくなっていた。
カレシと良好な関係だったら、残ると即答していただろう。
親友とも仲良くしていたら、迷うことなく残っていたはずだ。
でも、どちらか一方どころか。どちらとも、良好ではない状態となっていたせいで、凛は答えがそこにあるはずなのに悩んでしまったのだ。彼女にしては珍しく。
そう、答えはとっくに目の前にあったのだが、カレシと親友という言葉に引っかかってしまったことで、現実をしっかり見ることになった。
そもそも、ここまでそのままにしておいたこと自体がおかしかったのだが。
良くしようとしておらず、現状維持し続けたことで、付き合っている状態のままでいたツケを払うことが刻々と近づいていることにこの時の凛は気づいていなかった。
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