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しおりを挟むそれこそ、お互いに初めてできた恋人ということもあり、行ってみたいところがあったのは確かだ。
彼の方は、少ない友達に自慢したいのもあったようだが、凛は自慢したいからではなかった。ただ、カレシとの思い出がほしかったのだ。
(こういうのって自慢するものなんだ。そんなことしてたら、疲れそうだな。そっか。自慢したいから、普段ならやらないことをやろうとしたのか。……なんだ。私のためじゃなかったんだ)
凛は、そんなに山登りに行きたそうな顔をしていたかと思っていたが、そうではなかったことに何とも言えない顔をしてしまった。友達に見栄を張ったのも、そういうことなのだと思って気持ちが冷めていくのが止まることはなかった。
そんなテンションの中で、2年の時に修学旅行に行ったが、あいにくクラスが違うこともあり、湊とは中々会えずにいた。会えなかったのも、凛が修学旅行中も忙しくしていたからだ。
まぁ、冷め始めているのもあり、そんなさなかでも、どうにかして時間を作ろうとまでは凛もしてはいなかった。
(修学旅行の班長って、こんなに忙しいもんなの?!)
凛は、やったことがないことをやりたいと言うのが知れ渡っていたようで、同じ班になろうと男女ともに声をかけられまくった。同じ班になれば、班長とか面倒そうなものは全部凛がやると思われてのことだと思っていたが、他にも思惑があることに凛は全く気づいていなかった。
だが、凛が会えていないというのに親友は、湊とやたらと会っていたようで……。
「え?」
「なんか、凛が忙しくしてるって言って応対してたよ」
「あー、そうなんだ」
友達が明穂が凛のカレシとそんな話をしているのを見聞きしたと聞いても、確かに凛が班長なこともあり、ミーティングに呼ばれたり、他の班と意見交換をしたりしていたこともあり、親友がそんな凛を見かねて対応してくれたのだと思っていた。
(なんか、色んな友達に言われるな。その癖、明穂には会えてないんだよね。応対って、何してるんだろ? というか、湊はクラスも違うのにしょっちゅうこっちに来てて平気なのかな?)
明穂からは、そんな話を聞くことは、ついぞなかった。彼女は、消灯になっても中々戻って来ず、部屋を間違えたと言いながらかなり遅れて戻って来たのだ。
その間、凛たちのいる部屋では……。
「せっかくの修学旅行なのにカレシと会えてないの?」
「あ~、でも、その分、夏休みを満喫したから」
「惚気か!?」
きゃいきゃいと聞かれるままに恋バナをしていたが、夏休みに遊んだ友達は……。
「え? 凛とは夏休みに結構な日数遊んだ記憶があるけど?」
「あ、確かに」
「うん。遊びの予定ばっかだった」
そんなことを言ったら、爆笑されてしまった。
「……凛、彼と付き合ってるんだね」
「え?」
「あ、いや、見間違いかも知れないけど、夏休みに明穂が一緒にいるの見た気がしてさ」
「あぁ、なんか、たまたま会ったらしいよ」
「たまたま。そっか」
「?」
この時、そういえば親友は忙しいと言っていて夏休みに会えなかったなと凛は思っていたが、カレシと全力で遊びながらも、女友達と遊んでいた時に明穂が彼と出かけていたことを知らずにいた。
時折、何かとまだ付き合ってるんだよねと女友達に聞かれるのを聞いて……。
(これは、別れさせたいのかな?)
そんなことを思ったのは内緒だ。そして、遅れて戻って来た明穂に白けてしまって、そんな話は終わることになって、寝不足で次の日困ることもなかった。
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