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しおりを挟むだが、この時の凛は友達の思惑にも全く気づいていなかった。みんな勉強に追われているように見えなかったのだ。みんなというか。凛の友達は、余裕そうにしていたのだ。
その筆頭が凛だった。塾にも行かず、帰宅してからきちんと予習復習をしているのが日課となっていて、わからないままにしておかないことを心がけていたこともあり、試験前に慌てふためいて必死になることがそもそもなかったのだ。
友達は試験のたびに凛には余裕そうにしていたが、他の友達と慌てふためいていることに全く気づいていなかったのだ。
凛たちのグループの面々は、凛以外が勉強は余裕でできているかのようにしていたが、実際に本当に余裕があったのは凛だけだったのを友達は知られまいと隠していたことにも、気づいていなかった。
(一生の友達だと思って親しくしてたから、引っ越しても連絡取って仲良くしてくれるとは思うけど、問題は友達じゃないよね。……いや、夏休みの予定をキャンセルするのも心苦しいけど、みんな受験生なんだから、遊びまくってる場合ではないか。やっぱり、元々高3で遊び回るのは、駄目だよね。それで、志望してるところに落ちたら、大変だし)
そんなことを思って、夏休みの予定は脇に置くことにした。凛が、その気にさせた友達には悪いが、これで良かったのだ。凛は、成績が常に上位なこともあり、遊びや他のことをしていても勉強は疎かにしないように心がけていた。
でも、他の人たちも同じようにしているかと言うとそんなことはなかったのだ。試験前に凛に泣きついて来ることはしなかったし、グループの面々が一緒になって勉強することはなかった。勉強をする時は、集まらなかったのだ。だから、凛は気づいていなかったのだ。勉強に余裕な風にしておかないと凛たちは一緒にいられないようなグループとなっていることに。
きっと、率先して遊んだり、行事の委員やらをしている凛を見て、つられて遊んでいたツケが色々と現れ始めているのだ。それに凛は、気づいてはいなかった。
流石に3年になって同じことをするのは駄目だと諦めがついたのも、この時だったのは確かだ。
凛は、このまま通っている高校を卒業してもいいと言ってくれている両親から、すっかり慣れ親しんだこの辺りで、凛でも安全に一人暮らしできるマンションまで調べてくれていたのを見て、約束したのに!なんて父を責め立てる気持ちにはどうしてもなれなかった。
それもこれも、凛には致命的な欠点が改善されていないこともあって、両親も無理に一緒に引っ越さなくてもいいと言ったのもあったのかも知れない。
(触れてないけど原因は、私の欠点が大きな理由だよね)
凛が高校を卒業したら、その近くにある大学を受けて、進学予定だったことも大きかった。
そこまでして、凛に残ってもいいと両親が言ったのは、彼女が成長するにつれて酷くなっていく方向音痴のせいだったはずだ。
(あの高校を選んだのも、家から近かったからなんだよね。偏差値も高いから、受からないと思っていたけど、他だと自力で登下校は無理っぽかったから受かってよかったんだよね。授業についていくのは大変だったけど、今はあそこに入って間違いなかったと思ってるけど……)
小中と学校の帰りをちょっとでも道を間違えるだけで、おかしなところまでたどり着いてしまうのは、しょっちゅうあった。
高校は、それまでよりも近くに住んでいるからそれまでよりは大変なことにならないはずだったが、それが油断を招いたのか。大変だったことは、両手では足りない数を凛はやらかしていた。
それでも、高校に入ってからは凛にカレシができたこともあり、寄り道をしても彼が必ず凛を家の近くまで送るのが定番となっていた頃はよかった。
(あの頃は、本当によかったな。本当なら、高校最後の夏休みの予定もカレシとの方が多いはずだったのに全く入ってなかったってところが、既に終わってるようなものだし。去年は、カレシとよくデートしてたのに。……でも、まぁ、カレシのあの成績なら、余裕ないか)
そんな成績のことを思い返して、凛は苦笑してしまった。凛のように委員会やらで忙しくしていたわけでもないし、部活にも入っていないのだが、勉強が嫌いらしい。凛のように要領よく勉強していないようで、去年の夏休み以降の成績は酷いものがあった。
それがあって、受験生となったことで流石に必死になって勉強しているのだろうと凛は勝手に思っていた。
(私は、その倍くらい遊びまくってたけど、成績は保っているから、元々頭がいいとか思われてそうだよね。そんなことないのに)
そんなことを思ってげんなりしつつ、カレシと何をしても楽しかった頃を思い返し始めた。
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