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しおりを挟む両親に凛はよく似ていた。いや、色んな経験をしたことで観察しているうちに一番近くにいた人たちを真似ることが、楽しめることだと思ったのかも知れない。
家族と出かけるのが凛は好きだった。高校となってからは、友達と出かけるのも好きだったが、やはり家族の方が楽しみ方を心得ているように思えてならない。
(いや、あれは日頃のストレスも相まって私以上に楽しんでいただけな気がしないでもないけど……)
旅行やら、美味しいものやらをたくさん食べた。その時のテンションは、娘よりも両親の方が高めだった。
楽しむ時は楽しむべし!みたいなところがある両親の元で育った凛だが、テンションがあがりすぎた両親に放置されたこともあった。一回だけだが。それ以降、凛にしっかり目を向けながらはっちゃけることをやめない両親に色々と学んだのは言うまでもない。
もっとも、それが普通なのだと思っていたが、そんなことないことも高校に入ってから悟った。
でも、それを直す気はなかった。何事も一期一会だ。毎年、同じ時期に同じ場所に行っても全てが一緒なことは絶対にあり得ないのだ。
だから、高校に入ってから凛は、それが普通とは、ちょっとばかり違う……? いや、かなり違っていても、やめることはなかった。みんな、今がどれほど恵まれているかに気づいていないだけなのだとすら思っていた。
まぁ、それはおいといて、今は転勤のことだ。
「父さんも、色々と粘ってみたんだが、転勤先が出産と育休ラッシュになるらしくてな。今のところは、病気で休んでた連中も回復して、出産と育休ラッシュも終わって戻って来るから何とかなるが、転勤先は仕事復帰してからも追加要因が十分に確保できなくて、臨機応変なフォローが必要なとこになるのが目に見えてるから、そこで仕事してくれって頭を下げられてな」
「……」
凛の父はこれまで任されているところで、出産と育休ラッシュに何回かあっていた。本人も、育休を取っていて、若いパパさんたちにも何かとアドバイスしているらしい。女性のフォローも完璧で、仕事復帰したことでバタバタするのをフォローしつつ、それでカバーするはめになる未婚の女性社員のフォローもしているようだ。
その上、子持ちの人が急に抜けても大丈夫なように追加要因を確保することに奔走していて、父が任されているところはいつも和気藹々としているらしく、やり手で仕事もできる父はこうして転勤しては、そこを理想の環境にしあげては、他のところへと行くことになっていた。
仕事もできて、家庭でも良いパパであり夫なのだ。有言実行なところもあって、凛が高校受験で転勤先となっていた高校に受かることを目標として頑張ることになって、見事受かった。
そのため、凛が高校生の間はどこにも転勤しないと言ってくれていた。我が家は、凛が生まれる前から転勤となると子供が高校卒業まではみんな一緒と決めていたらしく、それを凛が小さい頃から母が話してくれていて、それに嫌だと思うことはなかった。
父が、家族のために必死に働いてくれていて、自分の家族のみならず、働いている部下たちが仕事がしやすく、家庭も両立できるようにと頑張っているのを凛は子供ながらに察していたからだろう。
そんな父が心苦しそうに凛に打ち明けてくれたのだ。それこそ、いつもなら、もっと前から話していただろうが、ギリギリまで掛け合って、どうにか他に打開策がないかと奔走してくれていたのだろう。
(私との約束を守ろうとしてくれてたのに。私は、夏休みをいかにして無駄なく満喫するかの計画をまとめることに必死になってたんだよね。申し訳なさすぎる)
凛は、内心でそんなことを思っていた。
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