許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら

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それから、10年もの歳月をかけ、スクレピアは本来の顔を取り戻して、すっかりよくなっていた。本人も頑張ったが、最高の治療を受けさせてくれた祖父母と叔父夫妻のおかげだ。


(感謝してもしきれないわ。私が、あの家にいたままだったら、治ってはいなかったわ)


実の娘のように寄り添い励ましてくれて、どんなに励みになったことか。

それでも、素顔を隠したまま学園に通っているのは、煩わしいことを回避するためだ。

それにロメリアと元婚約者のルストがいるのも大きい。
義妹は、わがまま放題で勉強などしてこなかった。貴族の多くがいるトップのクラスには入れていない。2人は、あまり上手くいっていないのは、明らかだ。お互い別の相手に夢中なのは、みんなが知っている。


(バレてないと思っているのは、2人だけなのよね)


顔を不慮の事故で、大怪我を負った婚約者を見舞うどころか、ルストがすぐに切り捨てて、その義妹と婚約したことは、みんなが知っている。義妹がやったのか、はたまた婚約者をすげ替えたかった彼がやったのかと憶測がなされてもいた。


(そういう、噂を流したのは、私なんだけどね)


だから、2人とも婚約を破棄するのは得策ではないと両親からも色々言われていて、冷え切った関係で、お互い浮気しているのだ。

スクレピアは、ロメリアたちの前で素顔をさらすなら、ドラマチックに披露したかった。

留学をすることにした。先にあちらで素顔をさらすようにして、引く手あまたとなり、皇太子の婚約者までに登りつめるまでにそう時間はかからなかった。

皇太子と共にパーティーへと出席することになり、スクレピアは復讐の時がついに来たのだ。


「それにしても、君のように美しい令嬢に婚約したいと思う者が現れなかったとは、本当に驚きだ。私にとっては、ラッキーとしか言いようがないが」
「ここでは、素顔を隠していましたから」
「なぜ、そんなことを……? その美貌で、不快な目にでもあったのか?」
「いいえ。この顔を取り戻すまでにとても苦労しました」


皇太子に義妹と義母のしたことを話した。すると激怒してくれた。


「きっと、今夜、ロメリアはルストと共に来ていることでしょう。……私は、あの子に会うのが怖くて堪らないのです」
「それは、知らなかったとはいえ、嫌なことを思い出させた」
「今夜は、私の側に居てくださいませんか?」
「もちろんだ。決して離れたりしたい」


王妃の誕生日を祝うべく、パーティーに皇太子と参加する。


(私が、今度はあなたの顔を潰す番よ。薬など使わずにあなたたちを破滅させてやる)


そんなドス黒いことを考えている素振りなど一切、見せることなくパーティー会場へと○○たちは入場をした。


「なんて、美しいんだ」
「あの方が、皇太子の一目惚れされた令嬢なのね。本当に美しい方だわ」


磨きに磨いた美貌により、義妹の婚約者はスクレピアも、他の子息たちと同じく見惚れて、ロメリアがそれにイライラしていた。

まさか、その女性が、スクレピアだとは義妹は愚か、殆どの者が気づいていなかった。

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