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第3章
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しおりを挟む「アシル!!」
「そんなのを庇うんだな」
アシルと呼んだのは、彼の姉のキャトリンヌだった。そんなのとは、コルラードのことを指していた。
元平民で、フィオレンティーナと婚約したことで、貴族になったコルラードを学園で何かといじめていたのは、アシルとリュシアン以外の王子たちとフィオレンティーナの婚約者になろうとした子息たちだった。
「花の守り手の婚約者に無礼がすぎますよ」
「はっ、花の守り手? ただの人間が、間違って選ばれただけだろ」
「っ、」
リュシアンは、それを聞いて、瞬時に激怒した。血の繋がった弟の言葉であろうとも、それが許せなかったのだ。
今にも、殺してしまいそうになるほどなのは、コルラードが怪我をしたからだ。
「リュシアン、よせ!」
「許せない」
「駄目だ。落ち着け。ジョスラン、手を貸してくれ。コルラードを医務室に運ぶ」
だが、それをさせまいとしたことで、リュシアンも隠しきれない殺気にまみれることになった。リュシアンとて、許す気などない。だが、怪我の手当をしなくてはと抑えていたに過ぎない。
「通せ」
「嫌だね。卑しい母を持つお前に指図されたくない」
「この方は、花の守り手の婚約者ですよ!」
「さっきも、言っただろ。ここにいるのは、人間ごときが、花の守り手になったことを認めてないんだよ!!」
巻き込まれたくないと逃げる者も多くいたが、そんな中でも……。
「そ、そんなことないです!」
「私は、人間であろうとも、花の守り手様を認めています!」
妖精の血の濃い者たちは、王族であろうと、身分が高かろうと関係なく、震えながらも物申していた。その傍らには妖精たちがいた。
「はっ、人間に跪けるか!」
花の守り手に人間が選ばれたことで、自分たちが婚約者になれないのだと思いたい面々は、フィオレンティーナを侮辱し続けた。
「っ、烙印持ちだ」
「ひっ、」
フィオレンティーナを侮辱していた者たちの顔や手に烙印が現れて、学園の中はパニックになった。
そこに教師やオギュストたちが駆けつけたが、フォントネル国に烙印持ちが数名現れたことに驚愕した顔をした。
「お前たち、花の守り手を侮辱したのか?」
「違う! 人間を侮辱しただけだ!!」
「今の花の守り手は、人間だ。それは、手違いでも、間違いでもない」
「そんなわけない!!」
それ以外の理由などないと烙印が現れた者たちは、言い訳を繰り返した。
そこにフィオレンティーナが現れた。
「コルラード!!」
「フィオレンティーナ様!?」
名前を聞いて、烙印持ちとなった者は、初めて見る花の守り手に驚きながら、こんなことを言った。
「は? こいつが?」
「待てよ。何で、人間が、ここに入れるんだ……?」
「ここに人間は、入れないはずでは?」
そんなことを言っている者たちなんてフィオレンティーナはどうでもよかった。
フィオレンティーナは、コルラードを見るなり駆け寄った。
「コルラード。しっかりして!」
「フィオレンティーナ、様」
「どうして、こんな怪我を?」
血塗れになっているコルラードを見て泣きそうになった。自分のせいで、誰かが怪我したのをフィオレンティーナは許せなかった。
そう、全てはフィオレンティーナが人間の小娘だと思っているから起こっているのだ。
「……あなたたちがしたの?」
「「「っ!?」」」
フィオレンティーナから、冷めた視線を向けられ、地を這うような声音が響いた。それは、体の芯から冷えるような感覚がして、怒鳴り散らしていた者たちは震え上がった。
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