84 / 99
第3章
14
しおりを挟むフィオレンティーナは、オギュストが辛そうにしているのは板挟みになっているからだと思っていた。
確かに板挟みになってはいたが、フィオレンティーナが思っているようなことではなかったのだが、フィオレンティーナは……。
(やっぱり王弟としては、兄である国王を立ててほしいわよね。私みたいな小娘に好き勝手されて、面白いわけないもの。はぁ、花の守り手だからって、勘違いしちゃ駄目ってことよね。国王より上の立場なんて、ありえないわよね)
建前があるから、言葉通りに捉えたら駄目だと思っていた。フィオレンティーナは、それを考えるのに疲れていた。
リュシアンは、フィオレンティーナに時間を費やしていて、今はこちらの新学期が始まる前にやらねばならないことがたくさんあるようだが、それでもフィオレンティーナを気にかけてくれていた。それにも、申し訳なくなってしまっていた。
(あの、お二人も、見かけなくなったし)
キャトリンヌとジョスランだ。それこそ、フィオレンティーナが死にかけている時にリュシアンだけでなくて、二人は婚約を解消してでも、ジョスランをフィオレンティーナの婚約者にしようとしていたと聞いて、ぎょっとした。
それをしないでくれてよかったと思っているが、しなかったことで家族だけでなくて、周りからも色々と言われていたようだ。それが、申し訳なくてならなかった。
(ここの人たちの思考が、いまいちわからないわ。妖精の血って、とっても複雑みたいね)
ここでは、やることなすこと、花の守り手だからと止められるのだ。フィオレンティーナはこの世界の両親や妹に言われていた。貴族らしくしていろと言われていたのと同じように聞こえてならなかった。
それだけでも、疲れてしまっているのに。烙印持ちとなった妹をフィオレンティーナから離すために触れたことで、キャトリンヌが火傷したと聞いて泣きそうになった。
誰も、その話をしてくれなかったのだが、フィオレンティーナが目が覚めたと知って色んな人たちが出入りしたが、フィオレンティーナが直接会うことはなかった。
それはたまたま、廊下を歩く者の言葉を耳にして知ったことだった。
取り乱したフィオレンティーナにキャトリンヌたちは、駆けつけてくれてなんてことはないように話してくれた。
あの刺繍のハンカチに不思議な力があって治ったと聞いて、フィオレンティーナは驚いてしまった。
眠っている間に本当に色々あったようだが、フィオレンティーナは何かした感覚は全くない。全くないせいで、何もできていない感覚しかなかった。
そんなことを思って、ため息がよくこぼれた。フィオレンティーナは、花を構えていられるだけで幸せだった。人間関係がぎくしゃくしていることにげんなりしていた。
疲れているせいか。蔦も元気なさそうにしていた。
そして、この屋敷に入れる者が更に限られることになった。
オギュストたちがしたわけでなく、花の守り手の証の蔦がしたことだったが、フィオレンティーナはオギュストたちがして益々人を遠ざけたと思ってしまった。
82
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
【完結】伯爵令嬢が効率主義の権化だったら。 〜面倒な侯爵子息に絡まれたので、どうにかしようと思います〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「反省の色が全く無いどころか睨みつけてくるなどと……。そういう態度ならば仕方がありません、それなりの対処をしましょう」
やっと持たれた和解の場で、セシリアはそう独り言ちた。
***
社交界デビューの当日、伯爵令嬢・セシリアは立て続けのトラブルに遭遇した。
その内の一つである、とある侯爵家子息からのちょっかい。
それを引き金にして、噂が噂を呼び社交界には今一つの嵐が吹き荒れようとしている。
王族から今にも処分対象にされかねない侯爵家。
悪評が立った侯爵子息。
そしてそれらを全て裏で動かしていたのは――今年10歳になったばかりの伯爵令嬢・セシリアだった。
これはそんな令嬢の、面倒を嫌うが故に巡らせた策謀の数々と、それにまんまと踊らされる周囲の貴族たちの物語。
◇ ◆ ◇
最低限の『貴族の義務』は果たしたい。
でもそれ以外は「自分がやりたい事をする」生活を送りたい。
これはそんな願望を抱く令嬢が、何故か自分の周りで次々に巻き起こる『面倒』を次々へと蹴散らせていく物語・『効率主義な令嬢』シリーズの第3部作品です。
※本作からお読みの方は、先に第2部からお読みください。
(第1部は主人公の過去話のため、必読ではありません)
第1部・第2部へのリンクは画面下部に貼ってあります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる