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第3章
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しおりを挟む「これは、素晴らしいな」
「ん!」
オギュストにキャトリンヌが、なぜか胸を張った。
それを見てコルラードは困るでもなく、苦笑せずに微笑ましそうにジョスランと見ていた。すっかり、キャトリンヌのやることなすことに慣れてしまったようだ。
同じように妖精たちが、胸を張っているのがちらほらいるのだ。それが見えてしまえば、微笑ましくしか見えない。
妖精たちいわく、見習いが学園に雇われながら、販売するのは難しいから、庭師たちと学園からのプレゼントとして作ってもらおうとしていたことを知ることになったのは、その時だった。
オギュストは、どんなものが出来上がるのかとずっと楽しみにしていた。
「ほぅ」
でも、フィオレンティーナが色々としてくれたが、試作品で留学期間中は難しそうだとなったが、ここでなら気兼ねすることないとキャトリンヌは言いたいようだ。
要約や補足やらは、妖精たちとジョスランがした。
「これ、叔母様、お部屋、楽しめる!」
「そうか。キャトリンヌは、クラリスのことも、考えてくれていたんだな」
「ん! 母様も、喜ぶ」
「そうだな。リディアーヌも、喜ぶな」
キャトリンヌの言葉にオギュストは、姪っ子の頭を撫でた。いつまでも、無邪気で純粋なままのキャトリンヌ。それに叔父であるオギュストは癒されていた。
そこまで言うだけはあった。オギュストは、出来上がるのが楽しみでならなかった。
庭師たちが、庭を美しくしていくのにもキャトリンヌは、まじっていた。そこには、ジョスランもいた。
人間の血の方が圧倒的に多い者たちと楽しげにしているのをオギュストは、興味深げに見ていた。
それこそ、この国でしか咲かない花に庭師たちは、大感激していていた。キャトリンヌやジョスランに聞きながら、メモを取ったり、スケッチしたりしていた。
「あ!」
「キャトリンヌ? どうした?」
「図鑑!」
「ん?」
「あぁ、フィオレンティーナ様が見たがってましたね」
「ん!」
「図鑑をか?」
オギュストは、急に大声をあげたキャトリンヌとその後、ジョスランも何やら舞い上がっていて、妖精たちの説明がないとオギュストもわからなかった。
何気にフィオレンティーナのことをよく覚えていたのは、キャトリンヌだったようだ。
数日のうちにフィオレンティーナの枕元に一番、この国で身近な図鑑が置かれることになった。
「あぁ、持ち出しできないと私が断ったものですね」
「それは仕方がないさ。他の本も取り寄せている。……喜ぶと思うか?」
「えぇ、図鑑だけでなく、植物園にも行けば喜ぶでしょう。キャトリンヌが、連れて行きたがっていましたから」
リュシアンは、それも難しいと言っていたことに何とも言えない顔をしてしまった。
「そうか。それもいいな。流石に私の庭でも、難しい花はあるからな」
「……庭師たちが来ているようですね」
「あぁ、あの庭師たちの方が、フィオレンティーナ様の好みをよく知っているからな。私が言うのも何だが、リュシアン。気を張り詰めるな」
「……他にできることが思いつかないんです」
それは、リュシアンが幼い頃に母親の側にいることしかできない歯がゆい子供時代を送っていた頃にダブって見えた。
リュシアンが、母親を亡くしたあとは、見ていられないほどだった。オギュストは、婚約者を他に見つけなければ甥の方が先に壊れてしまう気がしてならなかった。
庭では楽しげな声が響いていて、フィオレンティーナの部屋だけが全く別次元のようになっていた。
だが、リュシアンはそこにまじりたいと思うことはなかった。まじるなら、フィオレンティーナとでなければ意味がなかった。
そんなリュシアンに蔦が元気付けようとするかのように手に触れた。
「っ、心配してくれているのか?」
元気はあまりないが、時折、リュシアンに触れて来る蔦によって、フィオレンティーナの意志を伝えてくれようとしてくれている気がして、それに儚げに笑っていた。
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