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第2章
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しおりを挟むそんなことがあったことを何も知らないまま、チェレスティーナは怪訝な顔をある物を見ていた。
「何よ、これ」
チェレスティーナは、留学生たちが絶賛していたつりかごを見て、変なものがあると思って眉を顰めていた。彼女は、母親と同じくセンスの欠片もないため、初めて見るそれの良さなんてわかりようがなかった。
ただ、おかしな物があるとしか見ていなかった。それとこんな物は少し前までなかったはずだと思うくらいだった。
そんなことをチェレスティーナが思っていると同じ物を見た令嬢たちが、こんなことを言っていた。
「これ、可愛いわよね」
可愛いと聞こえて、チェレスティーナは眉を顰めた。可愛いさなんて、チェレスティーナには全くわからなかった。ただ、邪魔な物が増えたと思っていたが、他の令嬢たちは違うようだ。
「何でも、留学生の皆さんが絶賛しておられたと聞きましたわ」
「そこまでなの? なら、向こうで流行りそうね。どこで、売っているのかしら?」
「この学園の庭師の見習いが作ったそうよ」
「庭師が……?」
「販売は難しいから、学園長たちと庭師からのプレゼントにするみたいなことを耳にしたわ」
それを聞いていたチェレスティーナは、それの良さは全くわからないままだったが、似たようなのを作って飾ったら、流行りの先駆けで目立てると思ったのは、すぐだった。
そう思いついて母親に手紙を書くために寮の部屋に駆け出したのは、早かった。
「あちらでも流行るのは間違いないだろうけど、似たのなんて作ったら、大事になるわよ。キャトリンヌ様が、その見習いが最初だとお認めになられたそうだから」
「そうなの? なら、あちらの許可がないと難しそうね」
「見習いの考えたことだと思って真似なんてしたら、大変なことになるところよね」
貴族令嬢たちが、そんな話をしていたのをチェレスティーナが聞くことはなかった。
もっとも彼女が、最後まで聞いていても何がいけないのかなんて理解できはしなかっただろうが、それでも一番聴き逃してはいけないところを聞かなかったのは、確かだ。
制作者として留学生が見習いを認めていて、許可なく真似ることを既に禁じているとは欠片も思っていなかったのだ。
それだけの力があることをそもそも知らなかったことで、この後、とんでもないことになるとは誰も思ってもいなかった。
もっともやらかした方は、何がそこまでいけなかったのかわかることはなかったようだ。
そうでなければ、流行り出す前に行動して自慢して人を呼ぼうなんて短絡的なことを考えてはいなかったと思うが、そもそもチェレスティーナには一般常識的なものがなかった。
そのせいで、勉強も全く理解できていなかったのだが、誰もそこまでチェレスティーナが致命的だと思っていなかった。
そして、それが両親譲りなところも多かったことを知ることになるが、チェレスティーナも子爵夫妻も、自分たちが似た者親子で最低最悪だったことに気づくことはなかった。
何かあっても、この家族はフィオレンティーナのせいにしていればよかったのだ。
自分たちが悪くとも、フィオレンティーナが何もしていなくとも、フィオレンティーナを悪く言っていれば全てが上手くいく。そんな風にして生きてきたことで、チェレスティーナはそれがすっかり当たり前になっていて、それの何がいけなかったのかもわからないままになるとは、この時の誰も思っていなかった。
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