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第2章
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しおりを挟むリュシアンと同じく、キャトリンヌも母親にハンカチを手にした日に報告していた。
キャトリンヌの母親は、リディアーヌという名前で娘からの通信に何かあったのかと思って慌てて出たが、それは嬉しい知らせだったことに驚かされるとは思ってもいなかった。
「まぁまぁ、キャトリンヌが、このハンカチを?」
「ん! 交換! 母様、これ! 私、こっち!」
そう言って自分のハンカチを見せつつ、母のハンカチを母の手元に届けた。それは、素晴らしい刺繍が見えるようなプレゼント用のケースに入っていて、それだけでも素晴らしいものだった。
リディアーヌは、ハンカチと聞いてあまりピンとはきていなかった。だが、手元に届いたものと娘の手元のハンカチを見て目を見開いて驚いた。それは、素晴らしいとしか言いようがないものだった。
「っ!? あのハンカチは、確かに素敵にできていたけど、交換だなんて……」
娘にしては、上出来な仕上がりだったのは確かだ。でも、複数交換するのは無理があるとリディアーヌは思ったのだ。
それを察知した娘は、すぐにこう言った。
「花と染め、教える! だから、全部で3枚! 交換」
キャトリンヌの話に母親は、補足を頼むかのように娘の側にいる妖精を見た。妖精は待ってましたとばかりに説明をした。
その説明からも、刺繍をした令嬢は娘だけでなくて、妖精からも好かれていることがリディアーヌにもよくわかった。
「……そう。染めに使える花と染め方を教えるのとで交換したのね。キャトリンヌ、あなたが大切なものと知識を交換したのに。その1枚を私にくれるの?」
「ん! 母様。染め、もっと、教えて。失敗、駄目。ちゃんと教える」
「そうね。えぇ、教えますとも。その方に喜んでもらえるようにしなくては」
「ん! 頑張る」
キャトリンヌが、誰かにものを教えるのを頑張ると言うのに母親は、感激して涙した。
するとジョスランやリュシアンも、近しい女性のために交換したことを妖精に聞いて、リディアーヌは目を輝かせた。自分たちだけかと思ったら違っていたのが、嬉しかったのだ。
「選んだ!」
「そう。みんなも、喜んでいるでしょうね。キャトリンヌ、あなたがプレゼントしようと思ったからよ。ありがとう。とても、大事なものなのに。偉いわ」
「えへへ」
キャトリンヌは、母親にそう言われて嬉しそうにしていた。
そんな娘に母親は、にこにこして留学して成長したと思って益々感激した。
当初は、留学に乗り気ではなかった。いくら兄であるオギュストが力説しているとはいえ、キャトリンヌは妖精の血が誰よりも濃いのだ。ましてやあの国だ。何かあったらと思っていたが、兄が言うだけのことはあったことにリディアーヌは、嬉しくて仕方がなかった。
キャトリンヌがオギュストの話を聞いて即座に行くと言い出したのを知って、腰を抜かしそうになるほど驚いてしまったが、娘があんなに成長した姿を見ることになるとは思いもしなかった。
だが、同時に通信を終える前にその令嬢にお礼を伝えてもらうように娘に頼んだ。キャトリンヌは、大きく頷いた。キャトリンヌがやると言うなら、やるから心配はないはずだ。
だが、リディアーヌには気がかりがあって、顔を曇らせた。娘が一生懸命に交換するために頑張っているというのにそれ以上に何かして貢献したいのに何もできない歯がゆさがあった。
「私にもできることがあればいいのに」
そんなことを口にして悩むことになった。娘が初めてあんなにやる気に満ちているのだ。
それだけのハンカチなのだが、もらう一方となっているリディアーヌは心苦しさを感じてしまっていた。
だからといって娘があれだけ頑張っているのに刺繍をした令嬢に直接礼を伝えるのも、あちらが恐縮してしまうことになるのは目に見えている。そうなれば、娘にまで迷惑がかかってしまう。
それでも、何か関わりたくて仕方がなかった。
「……そうだわ。同じようにハンカチをもらった方になら話しても平気よね」
それとなく、自分が何かできることがないかを探ることにした。
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