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第2章
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しおりを挟む留学生たちが、そんなことを話していた間にも、フィオレンティーナが学園の庭師とアイディアを出し合って素敵なものを生み出していた。
その中の一つが、つりかごに寄植えをして、腰の下あたりの高さのところにぶら下げて飾れるようにしたのだ。ゆらゆらと風もないのに揺らめいているのには、理由があった。妖精たちがはしゃいで揺らしているからだった。
「可愛い!!」
それを見て、キャトリンヌは悶絶した。揺らめくのを妖精たちは楽しんでいて、そんなところに飾られて揺れることが今までなかったことで、楽しんでいるのだ。外で倒れるといけないからとそんなに高さはないが揺らめいていたら、いつか倒れかねない。
……いや、もう既にはしゃぎすぎて設置している間に倒れかけたようで、落ち着かせようと奮闘している見習い庭師がいた。コルラードだ。
彼は、読み書きから敬語まで習って、身なりもきちんとしていて、見違えるように立派になっていた。
目つきが鋭いのも、目が悪いせいだとわかって、眼鏡をつけるようになって、雰囲気はかなり変わった。
「この高さでよく倒れるなら、外の設置は難しいことになるかも」
ぼそっとと言うのに妖精たちは、大はしゃぎからはしゃぐ程度に抑えるようになった。
「まぁ、倒れなきゃ大丈夫かな。でも、気を付けてくれないと彼女が心配するよ」
妖精たちは新しい植え方をされて喜んでいた。そんなことを言われて大人しくなるのも珍しかった。
「これ、君のアイディアか?」
「へ? あ、いや、その……」
見習いの庭師のコルラードは、チラッと他のところで別のつりかごを見ているフィオレンティーナがいた。
(風もないのに揺れてる……? つりかごが、ここまで揺れるって、不思議だな)
フィオレンティーナは首を傾げて、それを繁々と見つめていた。つりかごを見比べても、同じ方向ではなくて、各々が揺らめいているのだ。明らかに風で動いているわけではない。そもそも、そんなに風はないのだ。
そんなフィオレンティーナのことをリュシアンは見ていた。
「彼女が?」
「あ、あの、内緒にしてください。ここでは、貴族の令嬢が、土いじりが好きだと知られると大変なんです」
「……」
「ご実家で、咎められて部屋に閉じ込められたこともあるようで、そのバレると困るんです」
「っ、」
リュシアンは、それを聞いて眉を顰めていた。キャトリンヌは、それを聞いて泣いていた。ジョスランは、それを慰めつつ、沈痛な顔をしていた。
「フィオレンティーナ様は、そういう話をご自分ではしませんが、その貴族らしくないことはしないとご家族と約束したとかで、花の世話もなさらないんです」
それを聞いて、妖精を見て、コルラードを見た。
「妖精の声が聞こえるのか?」
「……はい。みんな、だから黙ってるんです。親方たちも、妖精たちに言われて、庭師みんながフィオレンティーナ様のことは一切言わないようにしてるんです」
リュシアンは、それに物凄く驚いていた。妖精たちが、そんな話をしていたのを聞いたことがなかったのだ。
コルラードが話したことに妖精たちは怒っていた。フィオレンティーナが困ることは絶対に駄目だと団結力が半端なかったようだ。
「あ、すみません。聞かなかったことに」
「言わない。彼女が、酷い目に合うことなんて許せないからな」
「ぐすん」
「キャトリンヌ。もう、させない」
「ん」
ぐすぐすとキャトリンヌは泣いていた。フィオレンティーナが、酷い目にあったのが、花の世話をしていたせいだと聞いてショックを受けてしまったようだ。
それも、花の世話をしていることが、貴族らしからぬ恥だと思われただけでなく、あろうことか素敵な庭を台無しにしようとしたと勘違いした家族に散々な目に合わされてたのだ。
勘違いもいいところだ。彼女が世話をしていたからこそ真逆なことを思い、それを咎めて部屋に閉じ込め、使用人たちは仕事もせずにフィオレンティーナは死にかけたのだ。
それを妖精たちが小鳥に頼んで食べれる木の実を運んで何とか死なずに済んだようだ。
そんなことになっていることも、家族は気づきもしなかったのだ。痩せ細ったフィオレンティーナを見ても、医者に見せることなく、妹や子爵家の迷惑にならないように釘をさしただけで、心配なんてしなかったのだ。
それを知っていながら、許せなかっただろうにそれを留学生たちにもフィオレンティーナの迷惑になるからと妖精たちは頑なに知らせなかったのだ。
それは、衝撃的なことだった。それをリュシアンたちに知らせずにいたのだから。
フィオレンティーナが、また酷い目にあっては大変だと思って、おしゃべりな妖精たちは一致団結してだんまりを決めていた。
庭師たちのために頑張っていたフィオレンティーナが、庭師のおしゃべりのせいで酷い目にあわないために告げていたことにも驚かされた。
それも、フィオレンティーナだったからだろう。最初は不思議な人間がいるものだと思っていたが、今はフィオレンティーナのためなら何かしたくなるのもわかるとリュシアンは思っていた。
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