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第2章

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そんな留学生たちを学園の生徒たちは、一人でいようとも、三人が揃おうとも、留学生を眺めて固まる者が多かった。

そんな風に見惚れるのは、全員ではない。妖精の血を宿す者以外だとフィオレンティーナだけが、見惚れて固まることはなかった。

ただの人間は耐性がないせいで、そうなりやすいのだが、フィオレンティーナは例外だったようだ。

そんなの慣れっこな留学生たちは熱烈な視線を気にもしていなかった。

3人は、見かけるたびに生き生きとしている妖精たちのことが不思議であり、同時に心が和んだ。

キャトリンヌは、我がことのようににこにこして、あっちにふらふら、こっちふらふらとしているのも、いつものことになっていた。


「今年は、当たりでしたね」
「そうだな」
「理事長が、あれだけ力説していたのですが、正直なところ、期待してなかったんですよね」


留学生たちは、庭でランチをしていた。リュシアンとジョスランは、キャトリンヌに巻き込まれてピクニックをしているところだった。

校内で食事するより、外で花を見ながらの方がいい。この国では、外で食事をしないようだが、3人にとって天気がいい時は、外で食べることは普通なことでしかなかった。


「この花たちを見ていられるなら、向こうで勉強が少しくらい遅れてもいい」
「確かにそうですね」


それにリュシアンの言葉にジョスランは頷きながら、同意した。

キャトリンヌは、にこにことハンカチと花を見ていた。その周りには妖精たちが集まっていた。


「子爵家の庭も期待してたんですけどね」
「庭師が代わったとはいえ、あんな酷いのは初めてだ。近づく前に行く気がなくなった」


キャトリンヌとジョスランは、わざわざ見に行くとなり、リュシアンも期待して出向いたが、あり得ないほど酷かった。それこそ、直に見る前にやめてしまうほどだった。

そんな話をしているとキャトリンヌが、フィオレンティーナを見つけたようだ。


「フィオレンティーナ!」
「?」


ハンカチと花を見ていたキャトリンヌが、駆け出すのにリュシアンは不思議な顔をした。ジョスランは、すぐに婚約者を追いかけることなく、にこにこしたままだった。それも、珍しいことだ。

声をかけられて、呼ばれた令嬢がそちらを見た。

キャトリンヌが、ハンカチを見せていた。それを見て、二人は何やら話をしていた。その周りに妖精が集まっていた。


「誰だ?」
「キャトリンヌが、気に入った方ですよ。子爵家のご令嬢だそうです」
「……人間に見えるが?」
「そうですね。でも、妖精たちは……」


フィオレンティーナの周りには、妖精たちが飛び回っていた。

キャトリンヌも飛び跳ねるほど、フィオレンティーナと話せて喜んでいた。それは、妖精たちと全く同じだった。

そんな光景をトゥスクルム国で見ることになるとはリュシアンは思いもしなかった。


「……好かれてるな」
「えぇ、妖精たちにずいぶんと気に入られているようです。血の一滴も妖精とは無縁なようなのに珍しいですよね」
「……」


キャトリンヌは、フィオレンティーナを引っ張って来ていた。そんな姿も珍しいとばかりにリュシアンは見つめていた。従妹が、そんなことをするのは、よほど懐いた者にしかしない。


「こんにちは」
「こんにちは。フィオレンティーナさん」


キャトリンヌだけでなくて、彼女の婚約者であるジョスランも、フィオレンティーナを気に入っているようだ。それも、珍しいことだった。


「フィオレンティーナさん、こちら、私たちと同じ留学生のリュシアン・ラングラード様です」
「初めまして、フィオレンティーナ・アルタヴィッラです」


リュシアンは、頭を下げただけだった。

妖精の血の一滴も流れていないのにキャトリンヌや妖精が懐いていることが不思議でならなかった。


「フィオレンティーナ、ハンカチ、見せた!」
「この間の色合いも、柔らかで素敵でしたけど、この色合いも可愛らしいですね」
「えへへ」


フィオレンティーナにそう言われたキャトリンヌは、幸せそうにしていた。

ジョスランは、すかさず補足した。


「それ、キャトリンヌが育てた花でキャトリンヌが染めたんですよ」
「え? そうなんですか?!」
「うん! 上手く、できた。珍しい」
「キャトリンヌは、そういうの苦手だからな」
「むぅ~」


リュシアンの珍しいという言葉にキャトリンヌは、ぷくぅ~と頬を膨らませた。

フィオレンティーナは、それを見せてくれたことに喜び、礼をのべていた。

それにキャトリンヌは益々嬉しそうに満面の笑顔になった。そんな笑顔を隣国で見せることにも、リュシアンは驚かずにはいられなかったが、婚約者のジョスランは驚いてはいなかった。

ただ、キャトリンヌが喜んでいるのが嬉しくて仕方がない顔をしていた。


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