前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
44 / 99
第2章

18

しおりを挟む

「……ちょっと、それだけなの?」
「それだけって?」


フィオレンティーナへの八つ当たりが不発になり、その代わりにされた令嬢は、不思議そうな顔をしてチェレスティーナを見て、何を言われているのかに気づいていない顔をしていた。それどころか、チェレスティーナを馬鹿にしたような余裕すらあった。

それにチェレスティーナは、更にイライラし始めた。それを周りに見られていて、笑いそうになっているのを耐えている者もちらほらいたことにも気づいていなかったし、そんな余裕は彼女にはなかった。


「何なの? もう、あなたのところを呼ばないわよ?!」
「……」


そういえば、平謝りするものとチェレスティーナは思っていたが違っていた。

言われた令嬢は、物凄く白々しく驚いてみせたのだ。


「呼ぶ気でいたの? 迷惑だから、やめてよね」
「何ですって?!」
「それともう話しかけて来ないで。あなたみたいなのと友達だと思われたくないわ」
「っ、」


チェレスティーナは、それに物凄く腹を立てた。

彼女と一緒の令嬢たちにこう言ったのは、すぐのことだった。


「ちょっと、あなたたち、そんなのと一緒にいる気なの?!」
「友達だもの。でも、私も、あなたと友達だと思われたくないから、話しかけないで」
「っ、」


殆どの令嬢たちが、そんなことをチェレスティーナに言ったのだ。そんなことを言われたのは、初めてだった。

それにチェレスティーナは、フィオレンティーナが何かしたと思ったのは、すぐだった。そうでなければ、おかしいとすら思った。


「フィオレンティーナが、何かしたのね」


憎しみのこもった声を出したチェレスティーナに呆れた声を出した令嬢は、フィオレンティーナのせいにするのにため息をついた。


「何、言ってるの? あなたの家のことじゃない」
「え? 家……?」


突然、そこに家の話が出できたことにきょとんとしたのだ。

その間抜けっぷりにわざとらしく、こう言った。


「やだ。本当に知らないのね」


呆れ返った一人が、知らないチェレスティーナに話して聞かせた。

その間に周りはひそひそと話していた。知らないなんて、あり得ないと笑っていたが、チェレスティーナにはそれを聞く余裕はなかった。


「あなたの家が散々なガーデンパーティーを開いて、笑い者になったのよ」
「そうそう、お母様が、教えてくれたのよ。今までで一番最低最悪なガーデンパーティーだったそうよ」
「そんな、何かの間違いよ!」


チェレスティーナは、間違いだと思ってあざ笑う令嬢たちの言葉を信じていなかった。


「あら、我が家もよ」
「私も、手紙が来たわ」
「お父様は、お母様の代わりに行ったのに。あんなのに参加してたのかって、喧嘩になったそうよ。私まで、怒られたわ。私が見た時は、素晴らしかったのに。今は見る影ないみたいで、どうかしているみたいに言われたわ」
「っ、」


チェレスティーナは、それを聞いて悔しそうにしていた。何かの間違いだと思っていて、家に確認することはしなかった。

その内、落ち着くと思っていたが、前のように誰も彼もが自分に必死に媚びを売ることは、二度となかった。

チェレスティーナが憤慨していなくなってから、ぽつりと呟いたのは、それまでチェレスティーナと話していた令嬢だった。


「それにしても、あの令嬢の装飾は、相変わらずセンスの欠片もないわね」
「本当よね。私、笑うのを我慢するのが毎回、大変なのよ」
「私もよ」


チェレスティーナは、色んな令嬢からもらった装飾品を付けていたが、チグハグすぎて笑えた。


「でも、あれはまだマシよ。制服だもの。私服を見た? もっと笑えるわよ」
「そんなに?」
「ガーデンパーティーのドレスも、酷かったものね」
「そうそう、母娘が揃って、センスの欠片もないのを纏うから毎回、笑いを耐えるのが大変だったわ」


そんな風に笑われるようになったのも、この頃からだった。みんなもそう思っていたようで、チェレスティーナのセンスのなさによく笑っていた。

貴族たちが、チェレスティーナのことでよく笑っているのを平民は聞いていた。

それが気になって、わざわざ休日にチェレスティーナの私服姿を見た者は大笑いしていて、平民出身の者たちにもチェレスティーナのセンスの無さは学園で知らぬ者がいないほど広まったのは、あっという間のことだった。

そのため、チェレスティーナを見つけると笑いたくなる者がそこかしこにいて、チェレスティーナは自分が笑い者にされていることにも、センスの無さはにも気づくことはなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢、使い魔を召喚したら魔王様でした

Crosis
ファンタジー
婚約者であるカイザル殿下に無実の罪で婚約破棄をされたシャルロット・ヨハンナ・ランゲージ。 その噂は魔術学園へ一瞬にして広まり学園生活は一変、イジメに近い事も受け始めたそんな時、実家である公爵家の書斎で一人籠っている時に目の前に召喚術が記された古い書籍が落ちてくる。 シャルロットはそに書かれた召喚術式を使い使い魔を召喚したのだが、召喚されたのはどうやら『VRMMO』という国の魔王様であった。 ファンタジーと恋愛を足して二で割った内容です。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...