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第2章
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しおりを挟む最近の子爵家に出される食事からしても、わかりそうなものだが、それよりもガーデンパーティーを成功させなければという思いが強くあって、頭がいっぱいだったせいで開くことしか考えていなかった。
もっとも、それで今までどうにかなっていたのは、全てフィオレンティーナが関わっていたからこそだったのだが、夫人は人任せで招待客を相手にさえしていれば上手くいっていたせいで、こんなことになっても怒鳴り散らすことしかできなかった。
そのせいで、段々どころか、この一件で一気に不評となってしまい、フィオレンティーナの母はあの手この手で人を呼ぼうとするも、人がよりつかなくなってしまうまで、あっという間のことだった。
それだけではおさまらなかった。子爵夫妻はどこのパーティーにも呼ばれなくなってしまったのだ。呼んだら、そんなのと友達なのかと主催者が笑われるのは目に見えている。
子爵夫妻の顔など誰もみたけなかったことも大きかったが、そんなことを思われているなんて微塵も思ってもいなかった。
子爵夫人はパーティーにどうにかして呼んでもらおうとして、色んなところでしつこくしていた。そういうところに参加さえできれば、どうにかなると本気で思ってのことだった。
そのしつこさのせいで、いい加減にしてと腹を立てられたのも、一度や二度ではなかった。
「いい加減にして」
「そこを何とかして、私とあなたの仲じゃない。夫も一緒にとまでは言わないわ。せめて、私だけでも、お願いよ」
「は? どんな仲だと? やめてよ。あなたとは、知り合いってだけでしょ。変な言い方をしないで。誤解されたら、私まで笑いものにされるわ」
「笑いものだなんて、そんな……」
「もう、話しかけて来ないで」
そんなやり取りをし続けたのだ。否応なしに子爵夫人も、現実を見るしかなかった。
すっかり、貴族たちの心が奪われていた庭は、その魅力が消え失せてしまったかのように様変わりしていた。
何で子爵家のところに通いつめていたのかと言い出す者までいた。
「食べ物に何か入っていたんじゃないかしら」
「やだ。怖いこと言わないでよ」
「でも、あながちそうかも知れないわ。そうでなければ、あんなに必死になってなかった気がするわ」
それが一番しっくりくるとなり、あんなに貢ぎ物をしてガーデンパーティーに参加させてもらっていたんだと思うと庭は、元々大したことはなかったのだと言い出す者もいた。
だが、そんなものを食べていない庭師や庭の花だけを楽しみにしていた者は、そんなわけがないと思っていても、まことしやかに貴族たちが話すせいで、それがいつの間にか本当のことのようになっていくのも、すぐのことだった。
フィオレンティーナが関わらなくなっただけでは、そこまでにはならなかったはずだが、その庭を庭師と庭師を語った者がいじりまくったせいで、酷いものとなるまで、そんなに月日は経っていなかった。
みんな夢から覚めたかのようにしていて、食べ物のせいにしたくなったのも、人々を魅了して魅力がなくなったせいでもあった。
貴族たちは、食べ物に何か入っていたと思っていたが、ほとんどの人には目に見えないだけで、そこにいるだけで魅了されていたのだから、あながち間違ってはいないことに気づいている者はいなかった。
あの庭には中毒性があったことに間違いはなかったのだ。それに耐性のある者が、この国には少なかった。
ただ、それだけのことだ。
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