上 下
39 / 99
第2章

13

しおりを挟む

その頃の子爵家の庭はというとフィオレンティーナが、庭の花たちの世話を許されなくなり、寮生活をしていることもあり、あの嘘つきな庭師が躍起になって世話をしていたが、上手くいってはいなかった。

それこそ、フィオレンティーナは簡単そうにしていたが、フィオレンティーナに世話をされて喜んでいる者たちが機嫌をよくしていたことも大きく影響していた。

フィオレンティーナが世話を許されなくなってからは、何やらどんよりとし始めた。それを変えるべく、ガーデンパーティーに相応しい華やかさばかりを求めるようになった。

花と花の相性など欠片も考えずに植えるようにしたのだ。華やかでない花は、咲いていても処分したものも一つや二つではなかった。

そんなことをすれば、庭師の親方だった男から散々花が駄目になると言われて怒鳴られていたはずだが、そんなことすっかり忘れて……というか。そんなことを言われたことすら綺麗サッパリ忘れていた。

ただ、どんよりした雰囲気を打破しようと躍起になって、植え替えてばかりいた。


「くそっ、何で、うまくいかないんだよ! 大体、この空気の重苦しさは何なんだ?! 華やかな花を植えても、全然見立てがないじゃないか!」


子爵夫人が、人がどんどん離れ始めていることから、あれやこれやと要望を言い始めていた。

それを叶えるのに必死になっていたが、全然上手くいかなくなり、ついにはダヴィード・カデロは解雇されることになった。


「あなたじゃ駄目ね。明日から来なくていいわ」
「そんな」
「私の希望通りにできない庭師なんかいらないわ」
「っ、」


そんな庭師をどこも雇ってはくれはしなかった。以前雇ったところは、子爵家を解雇されたと聞いても雇う者は現れることにはならなかった。


「今更、雇うわけがないでしょ。今は、あの庭より我が家の方がマシになっているのよ。台無しにされたくないわ」
「っ、」


その庭師は二度と庭師として、どこかで雇ってもらうことはなかった。

子爵家を出し抜こうとして、雇ったことがある者たちは、子爵家に何か言われて庭をわざと酷くさせたと思っていたが、そうではなかったのではないかと思う者もいた。


「あの庭師、学園でも花の世話をする才能が欠片もなくて、辞めさせられたみたいよ」
「それなら、庭が酷くなって当たり前ってことね」
「でも、そうなると子爵家の庭を見事にしていたのは、一体誰だったのかしらね?」


夫人たちは、自分たちの庭を酷くされたとは話さずに噂で雇って酷くされたと聞いたことがあると話していた。その辺を他人から聞いたとぼかしながら、そんなことを思って首を傾げていた。


「でも、なにはともあれ、子爵家の唯一の自慢も終わりが見えてきたわね」
「そうね。最初で最後の自慢になりそうね」


散々なまでに図に乗っていた子爵夫人を思い返して、そんなことを言って面白おかしそうにガーデンパーティー以外では何一つ自慢がなかった頃を振り返って嘲笑っていた。

そういうことをする者たちは、次第に増えていった。それだけ、下手に出ていればつけあがるようなことをされていたこともあり、子爵夫人の悪口だけで何時間でも話せる者たちばかりだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜

白雲八鈴
ファンタジー
「貴様との婚約は破棄だ!」 はい、なんだか予想通りの婚約破棄をいただきました。ありきたりですわ。もう少し頭を使えばよろしいのに。 ですが、なんと世界の強制力とは恐ろしいものなのでしょう。 いいでしょう!世界が望むならば、悪役令嬢という者を演じて見せましょう。 さて、悪役令嬢とはどういう者なのでしょうか? *作者の目が節穴のため誤字脱字は存在します。 *n番煎じの悪役令嬢物です。軽い感じで読んでいただければと思います。 *小説家になろう様でも投稿しております。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

王国冒険者の生活(修正版)

雪月透
ファンタジー
配達から薬草採取、はたまたモンスターの討伐と貼りだされる依頼。 雑用から戦いまでこなす冒険者業は、他の職に就けなかった、就かなかった者達の受け皿となっている。 そんな冒険者業に就き、王都での生活のため、いろんな依頼を受け、世界の流れの中を生きていく二人が中心の物語。 ※以前に上げた話の誤字脱字をかなり修正し、話を追加した物になります。

両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

珠宮さくら
恋愛
ジスカールという国で、雑草の中の雑草と呼ばれる花が咲いていた。その国でしか咲くことがない花として有名だが、他国の者たちはその花を世界で一番美しい花と呼んでいた。それすらジスカールの多くの者は馬鹿にし続けていた。 その花にまつわる話がまことしやかに囁かれるようになったが、その真実を知っている者は殆どいなかった。 そんな花に囲まれながら、家族に冷遇されて育った女の子がいた。彼女の名前はリュシエンヌ・エヴル。伯爵家に生まれながらも、妹のわがままに振り回され、そんな妹ばかりを甘やかす両親。更には、婚約者や周りに誤解され、勘違いされ、味方になってくれる人が側にいなくなってしまったことで、散々な目にあい続けて心が壊れてしまう。 その頃には、花のことも、自分の好きな色も、何もかも思い出せなくなってしまっていたが、それに気づいた時には、リュシエンヌは養子先にいた。 そこからリュシエンヌの運命が大きく回り出すことになるとは、本人は思ってもみなかった。

辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです

くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は…… ※息抜きに書いてみたものです※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...