前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

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第2章

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フィオレンティーナのアイディアのおかげで、留学生たちは来るなり物凄く感激と感動をしていた。

それからというもの留学生たちは校内にいるよりも、外にいることが多かった。

彼らは、来てすぐに短期間の留学から長期にしてもいいと言い出していて、庭師たちはフィオレンティーナに感謝していた。


「お嬢さんのおかげだ。ありがとうな」
「いえ、そんな」


ジェズアルドだけでなくて、他の庭師たちも感謝していた。

どうやら、給料もあがったようだ。それどころか、間に合わせるのに手伝いに来ていた面々にも、謝礼が渡ったようだ。

留学生たちは来るなり校内より、庭師たちが頑張ったガーデニングを見て回ったようだ。


(よかった。それにクビになっても、次の職には困らなそうね)


フィオレンティーナは、庭師たちが嬉しそうにしているのを見て安堵していた。

更に学園の花たちが生き生きしていて、嬉しくて仕方がなかったこともあり、ずっとにこにこしていた。

そんなフィオレンティーナは、ジェズアルドが他の庭師たちにせがまれて、直にフィオレンティーナに礼を言いたいからと言われて、他には他言無用として再び会うことになった。

フィオレンティーナは庭師たちに感謝されて、挙げ句はなぜか拝まれるまでになって、それに苦笑してしまっていた。


(拝まれたのは、初めてかも。私は大したことしてないのに)


庭師たちが頑張ったからだと言うも、携われてみんな感激しているとまで言われて、拝んでいる人たちも無償でもいいと思っていたが、ちゃんとお金がもらえて、いい仕事もできたと喜んでいた。

それにはフィオレンティーナは困った顔をしてしまった。


「みんな、あのイラストを見て完成させたくて、集まったんだ。フィオレンティーナ様のアイディアはすげぇよ。みんな、読み書きできないのが多いから、イラストになってるとわかりやすくて良かったんだ」


そう言われて、あっとフィオレンティーナは思い出したかのような顔をした。


「どうした?」
「あの、読み書きを習ってみませんか?」
「は?」
「他で、雇ってもらうにも、読み書きができたら便利になると思うんです」
「……それは、できたら便利だろうが」
「よければ、私が教えます」
「お嬢さんが?」


ジェズアルドだけでなくて、他も驚いていた。

大人たちは、今更覚えられるのかと渋い顔をしていた。


「俺、教わりたい!」
「コルラード」


コルラードが、くいついたのにジェズアルドだけでなく、他の庭師も驚いていた。


「それと、敬語も教えます」
「敬語……?」
「言葉使いも、大事ですから」
「そうだな。今更、敬語は、難しいだろうが、文字は書けるようになりたいとは思ってたんだ」
「だが、俺らにできるようになるのか? そんなに頭よくねぇんだよ」
「なら、まずは自分の名前を書けるようになりませんか?」
「名前」


庭師たちは、自分の名前を書いてもらって目を輝かせていた。


「なぁ、俺の名前は?」
「コルラードくんは、こう書きます」


ジェズアルドは、自分の名前はサインするのに覚えていたようだ。他の庭師は、サインが書けない者は母印で済ませていたようだ。

だが、ジェズアルドはふとフィオレンティーナに聞きたいことがあるようで近づいて来た。


「なぁ、お嬢さん、嫁と子供たちの名前を書いてくれねぇか?」
「いいですよ」


ジェズアルドは、嫁と子供たちの名前を書き写して目を潤ませていた。


「お嬢さん、読み書きを俺にも教えてくれ。子供たちに文字を教えてやりてぇ」
「それは、素敵ですね。お父様から、読み書きを教えてもらえるなんて、喜びますよ」


ジェズアルドの言葉に他の大人たちも、家族に教えると聞いて、それはいいなと思い始めたようだ。


「お子さんに読み聞かせたりできたら、素敵でしょうね」


フィオレンティーナが、ぽつりと言った言葉に興味を持った者もいた。

こうして、フィオレンティーナは庭師たちに読み書きと敬語を教え始めることになった。

その中で、一番覚えるのが早かったのは、意外にもコルラードだった。読み書きも、敬語も、めきめきと上達していってフィオレンティーナですら驚かされることになるとは、この時は思いもしなかった。


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