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第2章
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しおりを挟む庭師たちは、留学生を迎えるために連日徹夜をしていた。
それこそ、ジェズアルドの呼びかけで他所から手伝いに来た者までいた。それは、フィオレンティーナの考えたアイディアを知って、それに携わりたいと思ったからのようで、日増しに増えていった。
もちろん、フィオレンティーナの名前は出してはいない。訳あって名は出せないが、貴族が、学園の庭師のためにと徹夜で考えたアイディアだと話したのだ。ジェズアルドたちがクビになるとわかって考えてくれたとまでは話したようだ。
つまり、クビになるとわかったから徹夜したと思われたようだが、実際は楽しくなりすぎて色んなパターンを考えてまとめたにすぎなかった。だが、それを彼らは知らないだけだったりする。
それを留学生たちが来るまでにどうにかして仕上げて、留学生たちが来た時に見事なものにしたいと話したのだ。そこに嘘はない。
「こんなことを思いつくなんてな」
「これだけじゃねぇぞ。期間や予算を考えたのまであった。本気で、俺らのこと考えてくれて、留学生たちにも喜んでほしくて考えたんだ。失敗できねぇ」
「そうか。んな貴族もいるんだな」
「これ、見せられたら、手伝いたくなるぜ。庭師なら、関わりたいと思わせる何かがある。俺も、知ってる奴らに声をかける。庭師の底力見せてやろう!」
「助かる。恩に着る」
ジェズアルドの呼びかけで、無報酬でも手を貸してくれる者が続々と集まった。庭師が完成したのを見たいと思ったことが大きかった。
そのため、フィオレンティーナが描いたイラストが全て実現したのは、庭師たちの想いもあって、留学生たちが来た日、ぎりぎりだったが、間に合ったのは奇跡に等しかった。
「凄い!」
留学生の一人が、声をあげていた。三人のうち一人で、彼女はこの国で見た誰よりも美しい少女だった。
彼女は学園に入るなり、正面の花たちに感激して、目を輝かせて飛び跳ねていた。
「ほぅ、凄いな」
「確かに見事ですね」
彼女以外の他の留学生も、学園に入るなり花たちに魅了されて足を止めていた。
学園長が校内を案内しようとしたが、留学生たちは学園の外を歩きたいと言ったのだ。
「え? あ、いや、その……」
それに困ったのは学園長だった。彼は校内の案内のみしか考えていなかったのだ。そのため、ジェズアルドが説明しながら案内することになったのは、予定にないことだった。
「どこも、素敵!」
「ありがとうございます」
「最高の庭師を雇っていますので」
無邪気に喜びを表現する女の子の言葉にジェズアルドはお礼を言い、学園長はやれと言うだけで何もしていないというのに鼻を高くしてそんなこと言っていた。
それにジェズアルドは苦笑していたが、何も言うことはなかった。
「……短期間によく仕上げたものだな」
ジェズアルドは、ぽつりと言われた留学生の言葉に何とも言えない顔をして苦笑していた。
「そうですね。半年でも、ぎりぎりでしょうに。……無茶なことをさせるだけさせて、あれでは大変でしたね」
留学生の男子生徒は、ジェズアルドにそんなことを言っていた。
学園長は、わけがわからない顔をしていた。
「人望があるんですね。無償で手伝いをしてくれる面々がたくさんいるのも、頷けます。これを見たくて、手伝いを申し出るのもわかりますよ。私でも、手伝えることがあれば是非お手伝いしたかった」
「あ、あの……?」
「素晴らしいものを見せてもらえた。感謝する。このことは、理事長に伝えておく。我々が、感激していたとわかれば、クビになっても安泰だろう。心配しなくていい」
「それは、ありがたいのですが……」
ジェズアルドは、自分一人の手柄ではないと言おうとしていた。
「心配するな。手伝いをした者たちのことも報告する」
「お喋りたちがしっかりと見てますから、その辺は大丈夫ですよ」
ジェズアルドは、それを聞いて頭を下げていた。それだけ絶大な力があるのだ。庭師にとっての誉れだった。
「あ、あの、何の話をされてるんですかね?」
学園長が話についていけずにいた。見目麗しい留学生たちは、呆れた顔をしていた。
ジェズアルドも、内心で学園長に呆れ返っていたが、頑張った甲斐があったと思っていた。
だが、それもこれも、フィオレンティーナがいてこそだった。それこそ、迷惑にならなければ、フィオレンティーナのことを話したかったが言えば、フィオレンティーナが大変なことになる。
だから、庭師たちのことしか言わなかったのだと思っていた。
おしゃべり好きな妖精たちが、フィオレンティーナのことを話していないとはジェズアルドですら思ってもいなかった。
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