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第2章
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しおりを挟むそんなことがあって、しばらく経った。
フィオレンティーナは、言いたいことを言えたことで、ちょっとスッキリしていた。
それでも、花を見ていれば気になることがなくなることはなかったが、それでもあの庭師よりも、この学園の庭師はきちんとしていて、フィオレンティーナがやきもきすることはなかった。
フィオレンティーナは、それでよかったが、あの見習い庭師の方はというと……。
「おい、コルラード! 花の特性を考えて植えろと何度言ったらわかるんだ。ったく、やり直しじゃねぇか」
「っ、す、すんません」
見習いの庭師は、そう言って植えた花たちを動かす庭師の師匠である親方の植え方にえ?と驚いていた。
それに気づいた親方は、一番年若い見習いを見た。
「あ? どうした?」
「い、いや、あの……」
「この花は、風通しがいいところの方が、花が長く咲くんだ。間隔も、ある程度あけてやるといい」
「っ、」
その後も、あの令嬢が言っていた通りのことを親方に言われたのだ。それに愕然とした。知ったかぶりなだけだと思っていたが、違っていたことが判明したわけだ。驚かないわけがなかった。
見習いであろうとも、庭師だ。この国一番といわれる親方の弟子になったのだ。自分の方が貴族令嬢よりも知識があると思っていたが、全然違っていた。任されることになって調子に乗ってしまったようだ。花のことをよく調べもせずに見栄えばかりを気にして、大事なことを気にかけられずにいたのだ。
コルラードは聞き流していたようで、フィオレンティーナの話を聞いていた。それによって、更に愕然としていた。
だが、親方の方はそんなことがあったことを知るわけもなく、こんなことを言った。
「ったく、こんなこともできないようじゃ、お前、庭師に向いてねぇな。せっかく、血が混じってんのにそんなんじゃ、宝の持ち腐れだ。もっと、妖精たちを見てやれ」
「……」
「ここは、任せられねぇから、荷物運びしとけ。やっぱ、お前には早かったみてぇだ」
「っ、」
せっかく、花を植えられるまでになったのにそんなことを言われてしまったのだ。
コルラードは、それでももう一度チャンスがほしいと頼みこんで、別のところを任されることになったのも、しばらしてのことだった。
「そこまで言うなら任せるが、前みたいなことになれば、次は当分は花植えは任せたりしないからな」
コルラードは、それに大きく頷いた。
それこそ、癪だが、あの貴族令嬢の言う通りにしていれば、親方に2度手間なことをさせずに済んだのにとずっと思って悔やんでいた。
その時に直していれば、褒められたのにと思うことは彼にはなかった。怒られたかったわけではないが、自分の手柄でもないことを褒められてもコルラードは嬉しいとは思わなかった。
ただ、親方にやっと任せてもらえたところをまだ早いと言われたことが悔しくて、別のところでもいいからと頼み込んで任せてもらえたことで、俄然やる気になっていた。
それは、任せてもらえた最初のところよりも、いまいちなところだったが、この時のコルラードには、その場所に欠片の不満も持つことはなかった。
あるのは、次こそは親方に失望されないようにすることのみだった。
「ここに合う花って、何があるんだ……?」
ただ、途方に暮れるコルラードがいた。最初の場所は張り切っていたのもあり、すぐにどんな風にするかを思いつくことができたが、新しく任された場所はそれがなかったのだ。
そのため、数日悩んだが、いいアイディアが思いつかず、困り果てた彼はフィオレンティーナを探すことにした。
彼女なら、何かしらいいアイディアがあるかも知れない。いや、なくとも話すうちに何か思いつくかも知れない。それは藁にも縋る思いだった。
そんなコルラードを手助けしたのは妖精だったが、彼は最初そんなことで妖精が助けようとしてくれることを見聞きしたこともなかった。
「……着いて来いって、言ってるのか?」
フィオレンティーナに花のことを聞きたいと思って、一人で探していたが見つけられないことに痺れを切らしたようで、仕方がなさそうにコルラードを案内してくれたのだ。
それに驚きつつ、着いて行くことにした。
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