上 下
31 / 99
第2章

しおりを挟む

そんなことを思いながら、花を見ることで癒されながら学園生活を送っていた。それは両親の言いつけ通りにフィオレンティーナが普通でいるのを守っているつもりだった。

つもりというのも、貴族令嬢の普通を両親にきちんと教えてもらったことがないせいだ。見て覚えろと言ったら、チェレスティーナのようになっている。

それが普通だとしたら、流石にフィオレンティーナは妹を真似るのは勘弁してほしかった。でも、特に何も絡まれることがなかったため、フィオレンティーナは彼女の思う普通のことをしていた。

そんなある日のことだ。学園で雇われている若い庭師の見習いであるコルラード・ディズラエリという少年が、フィオレンティーナは気になって仕方がなかった。

彼は短髪で、目つきが鋭いところがあった。そのせいで、貴族たちに色々言われていたようだ。

彼的には、睨んでいるつもりはないようだ。多分、目が悪いだけだろうが、その鋭さのせいで睨みつけていると思われて、貴族たちから色々言われていたようだが、そんな見た目や目つきの悪さを気にかけているわけではなかった。


「……何だよ?」


視線を感じて、コルラードはそんなことを言って、本人は睨むつもりはのようだが、傍から見ると睨んでいるように見えた。

それこそ、貴族にそんな口の聞き方をしたら、咎められることだが、フィオレンティーナがそんなことで怒ることはなかったし、睨まれているように見えても気にもしなかった。

これまでも、それで色々あったようだが、彼は自分の言葉遣いに問題があることにも、目つきが悪いことにも気づいていなかったようだ。


「あの、その花は、そこより、風通しのよいところの方が、花が長持ちして、長く咲きますよ」
「は?」


そこから、フィオレンティーナは植え方についても気になることをその見習いに話した。

だが、見習いは貴族令嬢が言うことをよく知りもしないくせに偉そうだと感じたのは、すぐだった。

もっともまくしたてるようにフィオレンティーナは言いたいことを言ったのだから、フィオレンティーナにも問題があったのは確かだ。


「……何だよ。偉そうに言って、変な女」


それでも、話すだけ話してスッキリした顔をして立ち去るフィオレンティーナを見て、コルラードは眉を顰めていた。

だが、フィオレンティーナは見習いとはいえ、言いたいことを言えたことにウキウキして、そんなことを言われていたとは知りもしなかった。

もっとも、偉そうにしているつもりなどフィオレンティーナは全くないが、変な女なのに当たっている。それが、もし聞こえていたら、そんなことを思う程度で怒りはしなかっただろう。

確かに変な女だったと反省はしたかも知れない。貴族だろうと相手が平民であろうとも、初対面だったのだから、フィオレンティーナに非があったと余裕があればすぐにわかることだったはずだが、そんな余裕までなかったようだ。

フィオレンティーナは、そういう令嬢だ。何でもないように日常を過ごしているが、心の傷はすぐに癒えることはなかったのだ。

それに本人が気づいていないのが一番の問題だったが、そこに至るまでの道のりは長くて周りが察するしかなかった。

それこそ、フィオレンティーナでなければトラウマになっていてもおかしくなかったが、フィオレンティーナはそこまでではないと思っていた。

何にせよ。コルラードとのファーストコンタクトは、お互い真逆なものになったのは言うまでもない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜

白雲八鈴
ファンタジー
「貴様との婚約は破棄だ!」 はい、なんだか予想通りの婚約破棄をいただきました。ありきたりですわ。もう少し頭を使えばよろしいのに。 ですが、なんと世界の強制力とは恐ろしいものなのでしょう。 いいでしょう!世界が望むならば、悪役令嬢という者を演じて見せましょう。 さて、悪役令嬢とはどういう者なのでしょうか? *作者の目が節穴のため誤字脱字は存在します。 *n番煎じの悪役令嬢物です。軽い感じで読んでいただければと思います。 *小説家になろう様でも投稿しております。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

珠宮さくら
恋愛
ジスカールという国で、雑草の中の雑草と呼ばれる花が咲いていた。その国でしか咲くことがない花として有名だが、他国の者たちはその花を世界で一番美しい花と呼んでいた。それすらジスカールの多くの者は馬鹿にし続けていた。 その花にまつわる話がまことしやかに囁かれるようになったが、その真実を知っている者は殆どいなかった。 そんな花に囲まれながら、家族に冷遇されて育った女の子がいた。彼女の名前はリュシエンヌ・エヴル。伯爵家に生まれながらも、妹のわがままに振り回され、そんな妹ばかりを甘やかす両親。更には、婚約者や周りに誤解され、勘違いされ、味方になってくれる人が側にいなくなってしまったことで、散々な目にあい続けて心が壊れてしまう。 その頃には、花のことも、自分の好きな色も、何もかも思い出せなくなってしまっていたが、それに気づいた時には、リュシエンヌは養子先にいた。 そこからリュシエンヌの運命が大きく回り出すことになるとは、本人は思ってもみなかった。

辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです

くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は…… ※息抜きに書いてみたものです※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ
ファンタジー
 シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。  あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。  テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...