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第1章
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しおりを挟むアンセルモが新しく婚約したのは、フィオレンティーナの双子の妹のチェレスティーナだった。そのことを知ったフィオレンティーナは、特に何も思わなかった。
たとえ、フィオレンティーナたちが婚約破棄したすぐ後に双子の片割れと元婚約者が婚約したのを知っても、はっきり言って、フィオレンティーナにはどうでも良かった。反対なんて欠片も持たなかった。
(でも、元婚約者とチェレスティーナなら、お似合いかも)
2人の性格から、ある意味ではこれ以上ないほどのお似合いではないかとフィオレンティーナは皮肉なことを思ってはいた。
でも、家族たちはフィオレンティーナが思ったこととは違うことを思っていた。
全ては、フィオレンティーナが悪くて貴族の子息や令嬢は12歳になってから中等部に入る者が殆どだった。初等部もちゃんとあるが、貴族は家庭教師をそれぞれが雇っていて家で勉強をきっちり見ることが主流になっていて、初等部から通うのは平民の中でも裕福な者たちだけで、中等部の平民が通うことができるのも成績がそれなりによくて、きちんと学費を払える人間と頭が良くて奨学金をもらえている極々一部の者しか平民は中等部以上に入ることはできない。
トゥスクルム国では、それが当たり前のことになっていた。そのため、平民でも自分の名前をきちんと読み書きできる人は少なかった。
フィオレンティーナは、転生したのも覚えていて、前世のこともきっちり覚えてあることもあり、勉強に関して焦ることは全くなかった。
むしろ、焦るべきは家庭教師を雇うお金をケチっていたことで、チェレスティーナがまともに文字の読み書きができるのかが、フィオレンティーナは気になってならなかったが、できなければ恥をかくのは妹だ。成長すれば、できの良い方の娘ならば、自分たちによく似ている娘ならできると両親は信じて疑っていなかったようだ。
チェレスティーナも、両親と同じく学園に入る前にちょっとやれば優秀な自分なら、すぐに順応できると本気で思っているようだ。まぁ、妹のことは本人の問題だから、これまたフィオレンティーナはどうでもいいことだが。
両親は、こんな風にぼやいていた。
「全く、学園に入る前で良かったわ。あちらの子息にも、あちらの家にも恥をかかせてしまうところだわ」
「全く、その通りだな。あんなことばかりするから人前に出せないというのが、まるでわかっていない。困ったものだ」
「熱心に部屋で勉強しているものと思っていたが、あれでは期待できそうもないな」
(期待できないのは、こっちのセリフよ。元より、親に期待って前世の時から今までしたことなくて、貴族令嬢となってから更苦手なことでしかないけど)
フィオレンティーナは、散々なことを言われるようになり、庭の花たちを世話することも、使用人たちの代わりにこなしていた家事全般をすることも許されず、本当に部屋に閉じ込められることになったのは、その時からだった。
閉じ込められることになったフィオレンティーナが一番悲しいと思っているのが、花の世話ができないことについてだった。
フィオレンティーナは、その日から何度か泣いていた。庭がどうなってしまうのかという心配と世話ができない悲しみから、情緒不安定になってしまっていた。
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