前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

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第1章

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彼との婚約は、フィオレンティーナが生まれた時からのものだった。気づいたら婚約していたが、彼の方もフィオレンティーナに全く興味がない子息だった。お互いの祖父が決めた婚約だったが、お互いがあまり干渉しないようにして好き勝手にしていることでやり過ごしていた。

それが、子爵家のガーデンパーティーが素晴らしいとなり、アンセルモは婚約者の家だとして、勝手に鼻を高くしていたようだ。

それが、今評判の庭を台無しにしようとしたのが、自分の婚約者の令嬢だと聞いて、彼はすっ飛んで来た。

全ては誤解なのだが、それを知っている使用人たちも庭師も、フィオレンティーナを助けようとはしなかった。真実を知っている面々は、知らぬ存ぜぬを貫いて自分たちに被害がこないようにした。

それどころか、使用人たちや庭師は、自分たちが気づかなかったかのように子爵家の面々に話をしたことで、フィオレンティーナが台無しにしようとしたと裏付けがつけられてしまったのだ。


(何もせずに給料だけをもらって、更に本当のことも言ってはくれないのね。……まぁ、はじめから期待なんてしてなかったけど)


フィオレンティーナは、彼女たちの方こそ、嘘をついているということを家族や婚約者に言う気はなかった。言ったところで、家族も婚約者も信じてくれるとは思えなかったのも大きかった。


(今更よね。何もしてないのに給料をもらい続けていた人たちだもの。何もしないままでお金が手に入り続けるのなら、告げ口なんてするわけがないと思っていたけど、バレた後にこうなるとまでは思ってなかったわ。しかも、庭を駄目にする方だと思われたことだけは納得いかない。そんなことを私がしてようとしたと思われたってことは、他の人たちもそう思ってもおかしくないってことよね)


フィオレンティーナの婚約者のアンセルモも、フィオレンティーナの家族と似たりよったりの反応で、それを見聞きしていると他の貴族も同じに思えて、複雑すぎる感情を持ってしまっていた。

それまで、話しかけて来ることも、家にわざわざやってくることもなかったというのに婚約者のアンセルモは我がもの顔をして、フィオレンティーナにこう言った。


「お前の妹がガーデンパーティーに出席していることが妬ましいからって、庭を台無しにしようとするとは、どうかしている。そんな女となんて婚約していたくない」
「……」
「そもそも、部屋から出ないで引きこもっていたくせに。急に外に出たかと思えば、とんでもないことをしようとするとは、性根の腐った女がいたものだ」
「……」


フィオレンティーナは、アンセルモが色々と嫌味なことを言っていたのを殆ど聞いてはいなかった。


(あの庭を私が台無しにすると家族や婚約者が、すぐにそう思ったのなら、他のみんなもそう思っていそうね。……そんなことするように見えるってことなのよね。ガーデンパーティーの準備も、家の全てのことも1人でやっていたって言うのに)


フィオレンティーナたちの婚約は、二人の祖父たちが決めたことが始まりだった。だが、そんな二人も亡くなっていて、フィオレンティーナが庭をめちゃくちゃにしようとしたというのを鵜呑みにしたアンセルモの家族からも、フィオレンティーナはどうかしていると思われてしまっていた。そこから、そんな令嬢と婚約をこのままには、しておけないと婚約破棄することになったのは、すぐだった。

フィオレンティーナは、婚約が破棄になることに対しては何とも思わなかった。散々なまでに言われることも、どうでもよかった。ただ、あの庭を酷くしようとしたと思われたことにだけ、心を痛めていた。


(そんなことをするように見えるのだとしたら、私にはおばあちゃんみたいな育ちの良さは皆無ってことよね。滲み出る内面の美しさも、私にはないってことになる。……世話がしたくて、今迄頑張って来たのに)


そんなところに転生したフィオレンティーナは、目の前の婚約者を……いや、元婚約者をぼんやりと見ていた。

アンセルモは、最終的にフィオレンティーナとの婚約をそのままにしておく気は前々からなかったように思えて仕方がなかった。顔合わせの時から、今回のことまで放置し続けてきたのだ。

そう考えると今回のことはいい口実ができたかのように思っているのではないかとフィオレンティーナは思っていたが、その辺のことを色々言うことはなかった。


(婚約破棄できるなら、それが1番よね。とんでもない勘違いをされているのに腹が立って仕方がないけど。お祖父様同士が仲良かったみたいだけど、それだけで婚約させられていたこっちの身にもなってほしいわ)


フィオレンティーナは、そんな不満をアンセルモと亡くなったお互いの祖父たちに持っていたが、それを言葉にして誰かに伝えることはなかった。


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