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第1章
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しおりを挟むそのうち、ダヴィードは庭師として他の庭師よりもかなりの金額で雇ってもらって、そこで雇われいた庭師は追い出されるということを繰り返していたが、一番最初に1ヶ月も経たずに解雇されるのとそれ以降もまるっきり同じことを繰り返し続けた。
ダヴィードは全く懲りずに庭をよくしようとして、世話をしてそれで庭を酷くさせることを繰り返してみせた。たった数日、彼が世話をしただけで庭を元通りにするのに1年以上かかるのは、いつものことだった。
だが、追い出されるせいで、元通りになるまでどのくらいの日数がかかるなんて気にもしていなかったし、酷くなっているという感覚もダヴィードにはあまりなかった。
そのせいで、怒鳴り散らされて追い出されるように解雇されても、もっと長い目で雇ってくれていれば、もっとよくなっていたと思っていた。自分には、それだけの腕があるのに誰も認めてくれていないという想いも、彼にはずっとあった。
トゥスクルム国の学園の庭を世話している親方に素質がまるっきしないと言われても、周りに色々言われても、ダヴィード本人だけがそんなわけがないと思っていたこともあり、子爵家の庭のことでもてはやされることになってすっかり舞い上がっていたが、子爵家の庭の世話なんて一度もしていないダヴィードは、それでもこのくらいは自分にだってできるという変な自信だけは大きかった。
だが、彼を雇った面々は、こう思った。あの庭師は子爵家以外でまともに働く気がもとから全くないと。子爵家が、学園を辞めることになって、最初に雇うことにしたから、変な義理立てをしていると思ったようなのだ。そんな殊勝な気持ちなどダヴィードに欠片もなかったが、どこも雇うことをしなくなったのは、そんな誤解がまことしやかに流れたことが大きかった。
そんなことになっていても、その庭師は自分が子爵家の庭を見事にしていると嘘をつき続けることをやめなかった。
雇う条件が色々とあったが、ダヴィードは子爵家に内緒で他の庭を担当して、しれっとした顔をしてどこも引き抜きをしてくれなくなってからも、何もなかったようにして平然とした顔をして、子爵家の庭に全く何もしていないままで、子爵夫人と会っていた。
子爵夫人どころか。子爵家ではフィオレンティーナも含めてだが、周りの貴族たちがこの家をどうにかして出し抜こうと画策していることを全く知りもしなかった。
それこそ、子爵家の庭を美しく守っているのは、何度も言うがフィオレンティーナだ。ダヴィードが他の貴族の庭をどうにかしようとして、子爵家の方に居ない方がよかったのは間違いない。彼が自分がしていると嘘をついて人に見せびらかすことをしているせいで、見つからないように動くフィオレンティーナは大変だった。
(あの人、しばらく見なかったけど、また来るようになったみたいね。……何もしないでいてくれるのはいいけど、見つからないように動くのが大変になるから、あんまり来ないでほしいわ。前は、人に見せびらかすようにしてたし。ここの庭を世話しているって嘘をつくのはいいけど、邪魔しないでほしいものだわ)
フィオレンティーナはそんなことを思って、ダヴィードのことを見ていた。
その頃のフィオレンティーナは、彼の名前も知らなかった
中には、ダヴィードの言うことがおかしいと思う者もいたが、実際に素晴らしい庭を見てしまうと黙るしかできなかった。
それこそ、子爵家の支払っている倍を払って引き抜こうとしたのが、バレでもしたら大事になる。今、物凄く評判がいいところのガーデンパーティーに呼ばれなくなるのを恐れてのことだ。そこで、何をしたかを子爵家のみならず周りの貴族に知られれば困ったことになるのは、明らかだ。貴族だけでなくて、その庭師もそうだ。
子爵家の他の使用人たちも、庭師と同じことをしているにすぎなかった。みんな、フィオレンティーナがしていることで給料をもらっているのだが、フィオレンティーナがそれで花の手入れができるのなら、それで良かったため何も言わないせいで、誤解が誤解を生む状態になっていた。
ガーデンパーティーの準備すら、フィオレンティーナが一人でこなしているのだが、人が庭を見て楽しそうにしているのを見て、フィオレンティーナは疲れ切っていながらも、にこにことしていた。
(やっぱり、和むのは、どこでも一緒よね。最初の頃は、流行りだと思っていたのが嘘みたいにこの庭の花たちを見て幸せそうにしてくれてる人が増えて来た。おばあちゃんの管理していたあの場所みたいに憩いの場になっていくといいけど)
フィオレンティーナは、そんなことを思っていた。彼女は、そういう女の子だった。
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