18 / 99
第1章
16
しおりを挟むそのうち、ダヴィードは庭師として他の庭師よりもかなりの金額で雇ってもらって、そこで雇われいた庭師は追い出されるということを繰り返していたが、一番最初に1ヶ月も経たずに解雇されるのとそれ以降もまるっきり同じことを繰り返し続けた。
ダヴィードは全く懲りずに庭をよくしようとして、世話をしてそれで庭を酷くさせることを繰り返してみせた。たった数日、彼が世話をしただけで庭を元通りにするのに1年以上かかるのは、いつものことだった。
だが、追い出されるせいで、元通りになるまでどのくらいの日数がかかるなんて気にもしていなかったし、酷くなっているという感覚もダヴィードにはあまりなかった。
そのせいで、怒鳴り散らされて追い出されるように解雇されても、もっと長い目で雇ってくれていれば、もっとよくなっていたと思っていた。自分には、それだけの腕があるのに誰も認めてくれていないという想いも、彼にはずっとあった。
トゥスクルム国の学園の庭を世話している親方に素質がまるっきしないと言われても、周りに色々言われても、ダヴィード本人だけがそんなわけがないと思っていたこともあり、子爵家の庭のことでもてはやされることになってすっかり舞い上がっていたが、子爵家の庭の世話なんて一度もしていないダヴィードは、それでもこのくらいは自分にだってできるという変な自信だけは大きかった。
だが、彼を雇った面々は、こう思った。あの庭師は子爵家以外でまともに働く気がもとから全くないと。子爵家が、学園を辞めることになって、最初に雇うことにしたから、変な義理立てをしていると思ったようなのだ。そんな殊勝な気持ちなどダヴィードに欠片もなかったが、どこも雇うことをしなくなったのは、そんな誤解がまことしやかに流れたことが大きかった。
そんなことになっていても、その庭師は自分が子爵家の庭を見事にしていると嘘をつき続けることをやめなかった。
雇う条件が色々とあったが、ダヴィードは子爵家に内緒で他の庭を担当して、しれっとした顔をしてどこも引き抜きをしてくれなくなってからも、何もなかったようにして平然とした顔をして、子爵家の庭に全く何もしていないままで、子爵夫人と会っていた。
子爵夫人どころか。子爵家ではフィオレンティーナも含めてだが、周りの貴族たちがこの家をどうにかして出し抜こうと画策していることを全く知りもしなかった。
それこそ、子爵家の庭を美しく守っているのは、何度も言うがフィオレンティーナだ。ダヴィードが他の貴族の庭をどうにかしようとして、子爵家の方に居ない方がよかったのは間違いない。彼が自分がしていると嘘をついて人に見せびらかすことをしているせいで、見つからないように動くフィオレンティーナは大変だった。
(あの人、しばらく見なかったけど、また来るようになったみたいね。……何もしないでいてくれるのはいいけど、見つからないように動くのが大変になるから、あんまり来ないでほしいわ。前は、人に見せびらかすようにしてたし。ここの庭を世話しているって嘘をつくのはいいけど、邪魔しないでほしいものだわ)
フィオレンティーナはそんなことを思って、ダヴィードのことを見ていた。
その頃のフィオレンティーナは、彼の名前も知らなかった
中には、ダヴィードの言うことがおかしいと思う者もいたが、実際に素晴らしい庭を見てしまうと黙るしかできなかった。
それこそ、子爵家の支払っている倍を払って引き抜こうとしたのが、バレでもしたら大事になる。今、物凄く評判がいいところのガーデンパーティーに呼ばれなくなるのを恐れてのことだ。そこで、何をしたかを子爵家のみならず周りの貴族に知られれば困ったことになるのは、明らかだ。貴族だけでなくて、その庭師もそうだ。
子爵家の他の使用人たちも、庭師と同じことをしているにすぎなかった。みんな、フィオレンティーナがしていることで給料をもらっているのだが、フィオレンティーナがそれで花の手入れができるのなら、それで良かったため何も言わないせいで、誤解が誤解を生む状態になっていた。
ガーデンパーティーの準備すら、フィオレンティーナが一人でこなしているのだが、人が庭を見て楽しそうにしているのを見て、フィオレンティーナは疲れ切っていながらも、にこにことしていた。
(やっぱり、和むのは、どこでも一緒よね。最初の頃は、流行りだと思っていたのが嘘みたいにこの庭の花たちを見て幸せそうにしてくれてる人が増えて来た。おばあちゃんの管理していたあの場所みたいに憩いの場になっていくといいけど)
フィオレンティーナは、そんなことを思っていた。彼女は、そういう女の子だった。
53
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる