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第1章
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しおりを挟む前世の祖母が、ずっとあんな感じの人だったとしたら、花に欠片の興味もない人にとっては、前世の母にとっては、娘の自分より趣味程度で仕事でお金にもならない花を大事にしている。そんな誤解と偏見の目で見ていて、嫌っていた可能性はある。
(それかただ単に花が好きじゃなくて、理解できなかったとか? 何にしても、そうだとしたら私も母さんを理解できそうもないわ。全てをお金で判断するなんて、私には無理だったもの。あのまま、母さんの望むような人生を歩んでいても、私は人生の途中でおかしくなって、それでも我慢して壊れていたかも知れない)
そこまで考えていたフィオレンティーナは、それに気づくのが遅すぎた気がしてならなかった。
あの世界で死ぬ前に知れたら……。
(そんなことを今更、考えても仕方がないのに馬鹿みたい。今は、新しい人生を精一杯生きなきゃいけないのに。……前世ではできなかったことが、ここでできてる。ガーデンパーティーをして喜んでほしかった人に見せられず、貴族の自慢大会の道具のようになってる気がするけど。……やっぱり、私には貴族らしくいるって無理があるわ)
そんなことに行き着く前にフィオレンティーナは、散々こう思っていた。
前世の母をあの頃はがっかりさせられなかった。そんなことになれば、やたらと一緒にいた祖母のことを悪く言わずにはいられないと思っていた。きちんとした仕事を職業にしようと母の望むままに大学で学んでいた。
(私のやりたいこととは程遠いものを大学では学んでいたっけ。その反動で、一人暮らししていたベランダでは私の……、前世の私が癒される空間を作っていた。あそこも、私が死んだせいで、全部枯れてしまったはずね。あそこも、おばあちゃんに見てほしかったな。野菜でも育てて自炊していればよかったのかも知れないけど、私には花を愛でている方が元気になれたのよね)
それもこれも、転生してみて思ったのが大学で学ぶ分野がストレスでしかなかったということだ。
自分には全くあっていない分野だったとしても、お金にはなると思っていた。前世の母はそれを選んだことにとてもご機嫌だったし、父も周りに自慢げにしていたのを知っていた。
だが、思惑が外れて、娘が大学を卒業して大手の会社に勤める前にあんなにあっさりと早死するとは流石の前世の両親も思っていなかったはずだ。
前世の自分が、あぁなる未来を知っていたら、あの大学を選んではいなかった。
(母さんも、そうだったはず。私が呆気なく死ぬことになると思っていたら、私の好きなことをさせてくれていた。……いや、変わりなかったかも)
前世の母を思い出して、何とも言えない顔をしていた。転生した家族とどちらがマシかなんて考えたくない。今のところ、素敵な家族だと思えるのは、前世の祖母だけだった。
(おばあちゃんが孫の死を悲しんで泣いてくれても、あの両親が泣くなんて想像がつかないのよね。早く死ぬとわかっていても、認めた仕事以外にはつかせてもらえなかった気がしてならないわ。……おばあちゃんが泣かせたくはなかったし、悲しませたくなかったけど)
フィオレンティーナは、転生した先でガーデンパーティーの準備に何かと忙しかったが、そんなことを考えずにはいられなかった。
どこか、疲れすぎてしまっていたのだろう。それでも、フィオレンティーナが倒れるなんてことはなかった。
前世の幼い頃も元気があり余っていたが、転生した彼女も病気知らずで元気だった。普通の10歳過ぎの女の子なら、大の大人数人分の使用人の仕事をこなし、ガーデンパーティーの準備までもこなして、1人で全てを取り仕切ってあとは使用人たちが並べるだけまで済ませておけるなんてことは、フィオレンティーナにしかできなかったことなのは間違いなかった。
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