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しおりを挟むオデットは、母の死と兄の残念さが増していて、更にショックを受けて、留学先に戻った。
もはや実家に戻ることを考えたくなかった。帰らずに済む方法があるのなら、それに飛びつきたいと思っていた。
「オデット。無理することないからな」
「大丈夫です」
何かと気にかけてくれていたジェラームとオデットは、戻って来てから婚約することになるまで、大した時間はかからなかった。
彼の両親や姉、従妹は、2人が婚約したのを大喜びして、祝福してくれた。
オデットは、ちょっと罪悪感に苛まれていた。つい、戻らなくていいのを見つけて、飛びついてしまった。きっと色々ありすぎて余裕がなくなっていたせいだ。
ジェラームは、婚約してから益々優しく気遣ってくれるようになった。そんないい人を利用しようとしたことに色々と思ってしまったが、そのうち彼こそ、自分の運命の人だと思えるようになり、罪悪感も消えた。
これで、留学を終えても、オデットは隣国に嫁ぐとなれば、兄も諦めて自力で頑張ってくれるようになると思っていたが、残念ながらそうはならなかった。
妹が、あてにならなければ、婚約してどうにかしようとして、婚約者のいない令嬢に色々とつきまとって色んなところから、苦情と抗議が公爵家に来るようになった。すっかり素敵な子息から、残念で気持ち悪い子息になってしまったようだ。やはりイケメンでも、中身がなさすぎるとわかると素晴らしい子息には見えなくなるようだ。
それに激怒した父は、卒業まで待たずに兄を勘当した。
その知らせが届いて、再びショックをオデットは受けた。兄のことではない。そんなことになったことで、父が心配になって、留学の期限が来る前に戻ることにした。
婚約者は、すぐに理解してくれて、本当にありがたかった。
「オデット……?」
「お父様」
「どうした? まだ、留学期間は終わっていないだろう? 何かあったのか?」
「いいえ。優秀すぎて、短縮してもらいました」
「そうか。優秀すぎてか」
「はい」
母が亡くなった時よりも、父は憔悴していた。戻って来て正解だとオデットは思った。
そんな冗談を言えば、父は儚げにしながら笑ってくれた。
そこから、婚約者のジェラームも父を心配していて、快く送り出してくれたと言えば、父は……。
「そうか。良い婚約者を選んだな」
そう言って嬉しそうにしながら、寂しそうにした。そんな顔をオデットは、生まれてこの方見たことがなかった。
そんな顔をさせたのが、兄だと思うと腹が立ったりしたが、もう二度と会うこともない人のことをあれこれ考えるのはやめた。
使用人たちも、オデットが戻って来たことにホッとしていた。
厄介なのがいなくなって、嬉しいような複雑な顔を使用人たちもしていた。厄介でも、この家には他に男児がいないのだ。
今後のことやらを考えると複雑なものが残っていた。
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