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しおりを挟むオデットは、そんなことをしてから留学をした。どうなったかをその目で見られはしなくとも、残るなんて気にはならなかった。
あの家に残るなんてあり得ないことでしかない。かと言って父にその話をする気には、どうしてもならなかった。
それよりも、何事もなかったようにブランシュと再び会えたことを喜んだ。
「オデット様、大丈夫でしたか?」
「全然へっちゃらでした」
「良かった」
それを聞いてホッとした顔をした。この方は、こういう性分のようだ。だから、あんなことをしてこれたのだろう。
だが、こちらに来てエルマンガルドがいないこともあり、存在感を消して生活しなくていいこともあいまったのか。あちらでは見られなかった化粧映えのする美人が、そこにいた。
オデットは、生き生きとして見えるブランシュに嬉しくなってしまった。
「ブランシュ様。イメチェンされたんですね」
「あ、その、伯母様と従姉がしてくれたんです」
「そうなんですね。ブランシュ様、とても素敵です」
「あ、ありがとうございます」
そう言うと恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうにした。そんな顔を留学前は見ることはなかったため、オデットも笑顔になった。
「あ、ぜひ、オデット様も、伯母様たちに会ってください。皆さん、オデット様のことを話したら会いたがっているんです」
どうやら、ブランシュのことを心配してくれていた人がいたようだ。ブランシュの両親は、エルマンガルドのことで褒めちぎられ、ブランシュのことでは誰も彼も褒めないことから、エルマンガルドばかりにちやほやしていたらしい。
それに気づいた伯母と従姉たちが、気にかけていたらしく、ずっと留学をすすめていたようだ。
ブランシュを気にかけていただけはあった。オデットが会いに行くと……。
「あなたが、留学を後押ししてくれたから、ブランシュがこちらに来てくれたわ」
「本当にありがとう。あのままでは、身体を壊していたわ。心だって、壊れてしまうところだった。ありがとう!」
「い、いえ、そんな」
そんな風に言われ、抱きしめられて、2人は余程心配だったらしく涙を流して感謝してくれた。
オデットにも、よくわかる。オデットはエルマンガルドから2週間ほど、こき使われただけでもストレスが酷かったなんてものではなかった。
その上、礼の1つもないのだ。やらせて当たり前のようになっていて、あんなことを何年も続けてきたのかと思えば、2人が気が気でなかったのもよくわかる。
ブランシュも、自分のことをこれほどまでに心配してくれていたのとオデットが無事にこちらに留学して来たことに泣いていた。
だが、オデットは純粋に感謝してくれる3人にいたたまれない気持ちになってしまった。オデットには、この人たちが眩しすぎた。
「……あの、私、お伝えしていないことがあるんです」
「?」
「その、ブランシュ様に話したことだけではないんです。その、私にとって厄介なのは、兄だけではなくて、もっと厄介と言いますか。その兄をダメ人間にさせた根本がいるんです」
オデットは、あまりにもいい人たち過ぎて、本当のことを正直に話した。そうでなければ、オデットの良心が痛んでならなかった。
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