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しおりを挟むあの頃の使用人たちがあんな顔をしていた意味が今のオデットにならよくわかった。
父であるエティエンヌ公爵は、それこそ何でもできる人だ。兄のように見せかけではなく、本当に何でもできた。他の家の男性たちが、兄までとはいかずとも、女性陣に色々と任せているのと違い、父のセンスの方がオデットには素敵に見えた。
そちらの方が話題になっても良さげなのに不思議でならなかった。もっとも学生にはわかりづらい魅力だったようで、夫人たちにはエティエンヌ公爵は、未だにモテていることをオデットは知らなかった。
父が何もさせないせいなのかはわからないが、母が甲斐甲斐しく息子を世話した理由がオデットには理解てまきなかった。
そんなことやらずとも兄ならば、昔から優秀だと言われていたのだ。父にも似ているのだから、できないはずはないのだが、母が兄にそれをさせようとしなかったようだ。
どうも母は息子を独り占めしたかったように思えてならない。いつまでも、自分を頼ってほしかったのかもしれない。その両方なのかはわからないが、そうした思惑のせいで兄は外では令嬢たちに騒がれる子息になったが、家の中では、何を着たらいいか。どれが自分に似合うのか。服のみならず、靴下、靴、ハンカチ。まぁ、持ち物全てから着るものまで、下着のことまでもコーディネートして決めてもらわないと駄目になっていた。
それだけではない。家の中の着替えもそうだ。キルデリクは、突っ立ってるのだ。オデットには信じられなかった。下着まで履かせてもらう気でいた兄を蹴り飛ばしそうになったが、オデットは服を着せるなんてしなかった。
だが、それを母にやってもらっていると周りには一切言っていない。兄は、何もかも自分でしていると周りに言っていた。もっとも、服の脱ぎきは自分でやることだ。だが、兄はそれは人にしてもらうことのようにしていた。
自分で着てとオデットが突き放した。ずっと母がしていたようで、ボタンをしめるのに悪戦苦闘したようだ。それと寝癖も直し方を知らず、流石に酷い格好で外に出せないと使用人が手助けしたことで、味をしめた兄は使用人に命じて着替えを手伝ってもらっていたようだ。
オデットも、代わりにコーディネートをすることになるまでは、兄の自分でやっているというその言葉を信じていた。信じていても、周りの令嬢たちに羨ましがられても、自慢に思うことはなかったが。わざわざ私服で、ちょっと街に出かけるだけで目立つ格好をしていることが、オデットはそもそも好きではなかった。
兄が、わざわざそうしているのだと思っていたが、違っていたとわかったのはあることがきっかけだった。
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